【北海道で本当にあった話】労災認定後に給付額が変更される場合も!2000万円の追加給付がされた事例

2002年に中皮腫で夫を亡くされたAさん。夫はホテルのボイラー技士として働き、1997年に55歳で定年退職し、嘱託職員として再雇用され2001年に中皮腫を発症していた。同年11月に労災認定されていましたが、当時は再雇用時の賃金を基に給付額を決定していました。

Aさんは当時から「再雇用時の賃金は正社員時の半分以下。おかしいと訴えたが、聞き入れてもらえなかった」と振り返っています。

労災保険の給付額は、「給付基礎日額」というものが算定され、その金額をもとに各種給付がされます。決め方は、大まかに言えば、病気になる直前3ヶ月の給与の平均を算出する形です。

ただし、アスベスト被害のように退職後に発病される方もおられますので、そのような方については、「労働者がその疾病の発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場を離職した日(賃金の締切日がある場合は直前の賃金締切日)以前3ヶ月間に支払われた賃金により算定した金額を基礎とし、算定事由発生日までの賃金水準の上昇を考慮して当該労働者の平均賃金を算定すること」(昭和50年9月23日付け基発第556号「業務上疾病にかかった労働者にに係る平均賃金の算定について」参照)となっています。

給付基礎額の決定については、一定の合理性はありますが、制度設計上は原因(一般には、転落・切断事故など)と結果(怪我・死亡など)のあいだの時間が長い職業がんのような「遅発性疾病」に十分に対応できているかと言えば、必ずしもそうなってはいません。

例えば、10代にアルバイトだけでアスベストを吸い、50代になって中皮腫を発症した場合に労災認定されても、給付される基礎金額は「疾病の発生のおそれのある作業に従事した最後の事業場」である10代の給与を基準に算定されてしまいます(中皮腫を発症した当時、年収1000万を超えていて、これから3人の子どもの学費をどうしようかと悩んでいる時であっても!)。

Aさんの場合は、夫の正社員のときの仕事が原因で中皮腫を発症したのに、同一企業でも再雇用時の賃金が基礎に給付額が決定されるのはおかしいでしょう、という問題提起でした。しかし、2001年当時はそのようなことは考慮されませんでした。

ところが、2016年に事態が変わる出来事がありました。

同じように再雇用時の賃金で給付金額が決められるのはおかしいと申し立てをしていた被災者の方の主張が、労働保険審査会という行政不服審査機関で認められました(被災者とご家族の奮闘に心から敬意を表します)。これを受けて、2017年6月に厚生労働省は都道府県労働局にあてて「定年退職後同一企業に再雇用された労働者が再雇用後に石綿疾患等の遅発性疾病を発症した場合の給付基礎日額の算定について」、という通達を出して指示を出しました。

要点をかみ砕いて言えば、「再雇用時にアスベストを吸っていない場合は正社員時の賃金で算定すること」ということです。話は単純そうですが、少し厄介な問題もあり、他の被災者について支援した事例もありました。また、これが適用されるのは基本的に、この通達が出された後に労災認定された方だけです(つまり「例外」がある)。詳報は別の機会に書きたいと思います。

さて、Aさんの話に戻ります。Aさんの場合、上記の通達が出されても基本的には適用されません。労災給付の決定がされ、年金の給付額も過去に決定されており、それらの決定時点で給付行為の「処分性」があったのですが、遺族年金受給期間は給付される年金に処分性がないので、不服申し立てができません。

療養中の方や遺族年金ないし一時金の支給が決定されて、「自分もそうではないか」と思う方は早急に対処すべき問題なのですぐにお問い合わせください。日本であれば、どこへでも行きます!

2017年9月、Aさんと北海道労働局を訪問しました。ある秘策を抱えて。

労働局の担当者に通達の話をし、あわせてAさんの労災決定に関して、「傷病発生日」が誤っているのではないかという話をしました。中皮腫の場合、傷病発生日は「確定診断日」ではなく、呼吸が苦しいなどで病院を受診(のちにそれが中皮腫が原因だったとわかるなど)した「初診日」が傷病発生日となります。ところがAさんの労災決定の処理では、「確定診断日」が傷病発生日となっていました。この差は数日だったのですが、月がまたいでいたために、給付基礎日額の決定のために算定基礎額にもずれが生じていました。

労働局の担当者には、傷病発生日が間違っているから足りなかった分の追加給付を検討してほしい、あわせて傷病発生日の変更とそれにともなう追加給付は「処分性」があるのだから、その処分には通達を適用させないとおかしいと主張しました。

そして2017年12月に、Aさんの見直しを求める主張がそのまま受け入れられる形で札幌中央労働基準監督署が見直しの決定をしました。給付基礎額は、1.6倍に変更されましたそしてAさんの夫に療養中に給付されていた休業補償給付、遺族年金給付、葬祭料について追加給付がされて、その追加給付分が約2000万円にものぼりました。

変更にあたって大きかったのは、Aさんが夫の給与明細を残していたことでした。これによってボーナスの金額も適切に反映されました。

給与明細がないと変更されないとかはありませんので、どんどんご相談ください。

参考記事:松下文音(2018年5月3日)「石綿労災給付金1・6倍増 申立期限後 札幌 02年死亡男性 労基署が見直し」北海道新聞

腹膜・心膜・精巣鞘膜中皮腫におけるニボルマブ(オプジーボ)使用についての署名のお願い

胸膜中皮腫のセカンドラインの治療薬として、昨年、ニボルマブ(オプジーボ)が保険適用薬として使用されるようになりました。
一方、胸膜中皮腫以外の腹膜等の中皮腫(腹膜、心膜、精巣鞘膜)の患者は非該当とされたままです。
腹膜等の中皮腫患者は、胸膜中皮腫に準じる治療を受けています。
私達は、腹膜等の中皮腫患者にも胸膜中皮腫と同様の治療の選択肢を一日も早く認めて頂きたいと願っています。
この切実な思いを以下の要望にまとめ、政府、薬品会社、医療者の皆さんに届けたいと思います。
できるだけ多くの中皮腫患者の方々にこの要望に加わって頂きますようお願いいたします。同時に、患者家族をはじめ、多くの皆さんにご賛同の署名を頂きますようお願いいたします。
2019年6月7日
中皮腫サポートキャラバン隊
共同代表 栗田英司・右田孝雄