アスベストによる肺がん

アスベストによる肺がんについて

中皮腫では、2017年には1550人の方が亡くなっています。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/chuuhisyu17/index.html

中皮腫に対して、アスベストが原因の肺がんの被害者数について次のような推計もあります。


http://www.env.go.jp/council/07air-noise/y0712-02/mat2-2.pdf

一方、中皮腫の被害者1に対して、アスベストが原因の肺がん被害者を2と仮定した場合の日本の労災制度や救済制度などの公的制度でどのくらいの被害者が補償・救済されているかが検証されているデータもあります。

「安全センター情報」2018年1・2月号、p.17より

労災制度や救済制度などでも、多くの被害者が認定されていないと考えられます(救済制度は中皮腫と肺がんの認定割合が1対1と仮定して制度設計されました)。まず入り口での請求・申請数が少ないという問題もあります。過去には、救済制度を所管する環境省の石綿対策健康被害対策室の室長が次のような発言もしています。

「肺がんの申請が少ないことは確実でございますし、また、医学的所見として用いるいろいろなパラメータを少しふやして、認定の機会をふやしていくということも必要になると思っております」。

http://www.env.go.jp/council/05hoken/y058-07a.html

加えて、労災制度と救済制度の石綿肺がんの認定基準は異なっているので、労災制度では認定されるけれども、救済制度では認定されないという方もいます。「救済制度で認定されなかったから、労災なんてもっと難しいと思っていた」という方もいます。以下に、労災制度と救済制度の認定(判定)基準を示しますが、大きな違いは、労災制度はアスベスト関連の仕事をどのくらいしていたのかという「ばく露歴」を判断の要素に加えていますが、救済制度はそれがなく医学的な所見のみの要件となっています。救済制度は医学的な所見だけなので、いかにも「正しく」かつ「容易に」、認定がされると思われるかもしれませんが必ずしもそうではなく、むしろ労災よりも認定(判定)の基準が狭くなっています。

労災認定基準

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/061013-4_leaflet.pdf

このうち、②の「胸膜プラーク所見がある+石綿ばく露作業従事期間1年以上」の基準で労災認定をされている方が約6割となっています。胸膜プラークの診断結果(とりわけ、胸部レントゲン、CT)が医師によってバラツキがあるのが現状です。また、手術時に肉眼で確認できる胸膜プラークの6割がCT等で確認できないとする研究(千葉労災病院・由佐氏ら)もあります。ある患者さんの中には、CTを確認した主治医から「アスベストは関係ない」と言われたのち、主治医に「胸膜プラーク確認のため、術中の写真撮影」を要請し、術中の写真で胸膜プラークが確認されて労災認定された方もいます。


救済制度判定基準

https://www.erca.go.jp/asbestos/general/pdf/shiteishippei.pdf

自分や家族は関係あるの?と思った方は

主治医の先生から「タバコが原因」と言われた、という方もまずお問い合わせください。そもそも喫煙歴の有無は、認定されるか否かに全く影響しません。認定基準を正確に理解している医療関係者はそれほど多くありません。また、認定基準にある「胸膜プラーク」や「石綿肺」の所見の有無については、専門家の中でも評価が分かれることも珍しくありません。

胸膜プラークについては、レントゲンやCTなどの画像所見での確認できないものが、手術時や剖検時などに肉眼的に確認できる症例も少なくありません。「肺癌取扱い規約(第7版)」(日本肺癌学会編、2010年)からは、肺癌手術記載における事項に関して、胸膜プラークの存在の有無、および存在した場合にはその状態を記載すること、と改訂されています。

日本で使用されてきたアスベストは、約9割が建設資材にとして建設現場で使用されてきています。アスベストをめぐる労災認定では全産業の半数以上を建設業が占めており、被害の実態を端的に表しているかと思います。建設業と一口に言っても、職種としては「はつり・解体工」、「左官」、「築炉工」、「電気工」、「塗装工」、「内装工」、「保温工・断熱工」、「大工」、「吹付工」、「事務」、「配管工」、「型枠工」、「屋根・外壁工」、「とび工」、「電工補助」、「現場監督」など多種にわたります。職業性疾患・疫学リサーチセンター理事長だった海老原勇医師の研究では、肺がんでお亡くなりになった建設労働者の解剖結果で、55例中48例(87.3%)に「胸膜プラーク」などのアスベストと関係する所見が認められました。肺がんになった約9割の建設作業者の方が「労災認定」相当の所見が認められたことになります。

30年以上前に肺がんでお亡くなりになられた方の申請が、救済制度(労災時効制度)で認められることもあります。とりわけ建設業に従事していて肺がんになった方は、いくらタバコを吸っていた方でも一度お問い合わせください。

2019年12月には、肺がん患者団体である「ワンステップ」と協同で、「アスベスト(石綿)肺がんの認識に対する医療関係者および患者・家族の実態調査」について日本肺癌学会で報告もしています。ご参考になさってください。