中皮腫・アスベスト(石綿)疾患の原因と労災保険制度認定と相談

更新日 : 2020年10月31日

公開日:2019年1月1日

目次

中皮腫・石綿疾患の労災請求から認定の流れ

中皮腫をはじめとする、肺がんや石綿肺などの石綿(アスベスト)疾病に罹患された方は労災保険制度への請求を検討しましょう。労災保険制度は国(厚生労働省)が管理・運営をしている公的制度で、石綿救済制度よりも給付内容が手厚くなっています。
認定されるために何が必要で、どのような順序を踏むことによってできるだけ早く認定されるのかについて解説します。まずは、以下に記載した請求から認定までの流れを確認してください。

労災請求から認定までの流れ

①対象疾病と「認定基準」・請求権の確認。
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②給付内容を確認。
※基準を満たしていない場合や不明な場合も請求を断念する必要はありません。
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③労働基準監督署に労災請求。
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④労災認定(不認定)の通知を受ける。
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⑤認定された場合は、決定内容に誤りがないか「調査結果復命書」を取得して確認する。同時に、雇用されていた(いる)会社や関係会社(建材メーカー等)、国に補償(賠償)を求めることを検討する。不認定となった場合や認定でも決定内容(支給額)に不服がある場合は「審査請求」を検討する。

では、上記の流れに沿って説明をしていきたいと思います。

中皮腫・石綿労災疾病と認定基準

労災の対象になる石綿疾病と「認定基準」は次のとおりです。


病気
     認定基準
中皮腫次のいずれかに該当

①第1型以上の石綿肺所見がある
②石綿ばく露作業従事期間が1年以上ある
肺がん「原発性肺がん」であり、次のいずれかに該当

①第1型以上の石綿肺所見がある
②胸膜プラーク所見がある+石綿ばく露作業従事期間が10年以上ある
③広範囲の胸膜プラーク所見がある+石綿ばく露作業従事期間が1年以上ある
※「広範囲の胸膜プラーク」とは、⑴胸部胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな 陰影が認められ、かつ、胸部CT画像によりその陰影が胸膜プラークとして確認される場合、⑵胸部CT画像で、胸膜プラークの広がりが胸壁内側の1/4以上ある場合、のいずれかを指す
④石綿小体または石綿繊維の所見がある+石綿ばく露作業従事期間が1年以上ある
⑤びまん性胸肥厚の所見がある
⑥「石綿紡織製品製造作業」、「石綿セメント製品製造作業」、「石綿吹付作業」で石綿ばく露作業従事期間が1年以上ある
石綿肺次のいずれかに該当

①管理4の石綿肺所見がある
②管理2以上の石綿肺で次のような合併症に罹患している
「肺結核」、「結核性胸膜炎」、「続発性気管支炎」、「続発性気管支拡張症」、「続発性気胸」
びまん性胸膜肥厚次のすべてに該当

①石綿ばく露作業3年以上
②著しい呼吸機能障害(パーセント肺活量(%VC)が60%未満など)
③胸部CT画像上に一定以上の肥厚の広がりがある
良性石綿胸水厚生労働省本省での個別協議

「石綿ばく露」とは

「石綿ばく露」とは、アスベストを吸うことを指します。次のような作業に石綿ばく露があった可能性があります。ただし、自覚的に石綿ばく露をしたと認識していない被災者の方も少なくありません石綿ばく露(原因)調査の3つのポイントなども確認してください。

・石綿鉱山・石綿製品の製造に関わる作業

・石綿や石綿含有岩綿等の吹きつけ・張りつけ等作業

・石綿原綿または石綿製品の運搬・倉庫内作業

・配管・断熱・保温・ボイラー・築炉関連作業

・造船所内の作業(造船所における事務職を含めた全職種)

・船に乗り込んで行う作業(船員 その他)

・建築現場の作業(建築現場における事務職を含めた全職種)

・解体作業(建築物・構造物・石綿含有製品等)

・港湾での荷役作業

・発電所・変電所・その他電気設備での作業

・鉄鋼所または鉄鋼製品製造に関わる作業

・耐熱(耐火)服や耐火手袋等を使用する作業

・自動車・鉄道車両等を製造・整備・修理・解体する作業

・鉄道等の運行に関わる作業 

・ガラス製品製造に関わる作業

・石油精製、化学工場内の精製・製造作業や配管修理等の作業

・清掃工場または廃棄物の収集・運搬・中間処理・処分の作業

・電気製品・産業用機械の製造・修理に関わる作業

・レンガ・陶磁器・セメント製品製造に関わる作業

・吹きつけ石綿のある部屋・建物・倉庫等での作業(教員 その他)

・エレベーター製造または保守に関わる作業

・ランドリー・クリーニングに関わる作業

・ガスマスクの製造に関わる作業

・上下水道に関わる作業

・ゴム・タイヤの製造に関わる作業

・道路建設・補修等に関わる作業

・映画放送舞台に関わる作業

・農薬・バーミキュライト等を扱う作業

・酒類製造に関わる作業

・消防に関わる作業

・歯科技工に関わる作業

・金庫の製造・解体に関わる作業

・その他の石綿に関連する作業

・タルク等石綿含有物を使用する作業

出典:厚生労働省 石綿にばく露する業務に従事していた労働者の方へ

・自分は石綿ばく露の記憶がない。
・「労働者」ではなかった。
・会社がもうない。
・会社が労災をかけていなかった。
 などの自己判断で請求を断念しないようにしましょう。

対象疾病と石綿ばく露との関係

中皮腫

全ての中皮腫は石綿ばく露を原因として、労災保険制度や石綿救済制度などの給付関連制度は整えられています。胸膜肥厚(胸膜プラーク)の所見は、石綿ばく露を示す証拠となります。中皮腫の治療方法などについてはまだまだ研究が進められています。

肺がん

アスベストが原因の肺がんは、中皮腫の2倍にあたる被害者がいるとされています。近年の国際的な動向では、4~6倍ほどになるという調査結果も出されています。一方で、中皮腫の死亡者数をもとに被害者数を推計した場合、2割程度の被害者しか公的な補償を受けられていません。医療関係者の認識不足や安易に「タバコが原因」とされてしまいがちです。胸膜肥厚(胸膜プラーク)所見は石綿ばく露との関連を示す指標の一つとなります。肺がんの労災認定には、「喫煙の有無」は関係がありません。今年は医学的資料がない平成元年や平成4年の死亡者で、労災時効救済による認定もありました。近年、患者や遺族が労災認定を求めて起こした多数の行政裁判で、国側が敗訴し労災と認められるケースが相次いでいます。

石綿肺(アスベスト肺)

粉じんに長期間ばく露すると、肺に線維性の病変が起こり、呼吸困難などの症状が起こります。これを「じん肺」と言いますが、アスベストの粉じんを原因とするものについて、「石綿肺」と言います。この石綿肺は、しばしば肺気腫や間質性肺炎、肺線維症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などと診断され、見逃されているケースがあります。画像診断だけでは鑑別の難しいものもあり、職歴による石綿ばく露情報が診断の大切な指標となります。じん肺は、まず労働局に、「じん肺管理区分申請」をして管理区分決定される必要があります。決定の内容と続発性気管支炎等の合併症の有無などを考慮して労災請求が検討できます。

良性石綿胸水(石綿胸膜炎)、びまん性胸膜肥厚

良性石綿胸水は、アスベストのばく露により胸膜炎が起こり、胸腔に水がたまった状態を言います。場合によっては、胸水によって呼吸機能が低下します。診断が難しい疾病のため、労災の認定基準は設定されておらず、個別のケースごとに判断されます。びまん性胸膜肥厚は、肺側と胸壁側の胸膜が癒着して厚くなっている状態を指し、癒着が広範囲で起こるため、呼吸困難を引き起こします。

胸膜プラーク

胸膜プラークはアスベストを原因とする良性の病変(壁側胸膜中皮細胞下層の結合組織の限局性増生)で石綿検診の重要な画像所見となります。胸膜プラークが存在すること自体で何かしらの身体的症状を生じさせることはなく、肺機能への影響もありません。胸膜プラークはアスベストばく露の確実な証拠となります。2013年から2016年度にかけて環境省が実施した中皮腫登録事業での集計では、中皮腫1,506例中1,170例(77%)に胸膜プラークがみられなかったと報告されています。

中皮腫・石綿労災で請求できる方

請求できる方は基本的に次のような方です。

①「労働者」としての仕事で石綿にばく露して、労災保険制度の対象となる石綿関連疾病で療養中の方

自営業者や一人親方の方でも、「労災特別加入」をされている場合は対象となります。そうでない場合でも、修行時代など「労働者」としての時代に石綿ばく露をした方は請求できます。詳しくは、労働者性の判断などを確認してください。

② ①の遺族の方

条件によって、「妻」ないしは「夫」であったり、子・父母・孫など、被災者との生計維持関係や障害の有無によって受給権者としての順位が決められています。

中皮腫・アスベスト(石綿)労災補償(給付)の内容・金額・請求期限

労災制度では、治療費無料の療養補償給付、平均賃金の80%の休業補償給付、通院交通費の支給、遺族補償給付、葬祭料などが支給されます。石綿救済制度よりも充実した内容となっています。下の表は、両制度の代表的な給付を整理・比したものです。

石綿(アスベスト)労災制度と石綿救済制度の違い

各給付の概要

給付基礎日額(平均賃金)

休業補償給付や遺族補償給付の給付額算定の基礎となる金額です。退職前3ヶ月の賃金の平均などから算定されます。

中には、アスベスト肺がんで療養中の方の給付金額が変更された事例ご遺族の方で労災を受給されている方でも給付額が変更される場合もありますので給付額に疑問がある方は参考にしてください。

療養補償給付(治療費)

療養補償給付では、労災病院や労災指定医療機関において、原則として無料で治療を受けることができます。

移送費(通院交通費・宿泊費等)

移送費の支給は原則として最寄りの医療機関への通院が対象となりますが、中皮腫の治療については、病気の特殊性から、遠距離にある専門医への通院費も支給されます。これは2005年に、当時の尾辻秀久厚生労働大臣と中皮腫患者との面談によって、現在の弾力的な運用につながっているものです。

例えば、「中皮腫の石綿労災補償における移送費の申請:北海道労働局管内の事案」の事例紹介のように、北海道の中皮腫患者さんが山口県の病院を受診した場合も、関連の交通費・宿泊費が支給されています。ただし、あくまでも個別判断ですので、支給の根拠となる意見書などをあわせて提出しておくことを強くお勧めします。

休業補償給付

休業補償給付では、中皮腫などのアスベスト疾患のため働くことができない場合で、給付基礎日額の8割(休業特別支給金がこのうち2割)が療養している期間について支給されます。支給の条件は、認定対象疾病に罹患し、「療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき」となります。退職している100歳の方でも、労働不能と判断され、労働による収入がない場合は支給の対象となります。一部しか支給されない方は対応策を検討してください。

遺族補償給付・葬祭料など

また、ご遺族(配偶者や一定年齢までの子ども)には、給付基礎日額などをもとに、遺族補償年金や遺族補償一時金が支給されます(遺族補償給付)。この他、葬祭料も支給されます。在学中等のお子さんがいる場合については、労災保険制度における「社会復帰促進事業」の一環として、「労災就学等援護費」が支給されます。

請求(申請)期限

療養中の方の請求(申請)期限

給付ごとに請求の時効があります。休業補償給付、移送費はその請求事由が発生した翌日から2年で時効となります。労災認定された時点からではありません。つまり、中皮腫や石綿肺がんなどの場合、胸の痛みや咳など自覚症状があり近所の呼吸器内科などを受診して、胸水などが確認されて「疾患の疑い」が生じた日の翌日から起算点となります。休業補償給付は一日単位での請求、通院交通費(移送費)は病院への通院ごとに請求となります。

例えば、2019年2月1日に、調子が悪く近所の呼吸器内科を受診し、CT画像などで異常を指摘されて中皮腫の経験が豊富な別の病院を紹介されて3日後の2月4日に受診して、のちに中皮腫の診断が確定した場合は2019年2月2日が時効起算点となり、下記のような請求期限となります。

・2021年2月1日までが、2019日2月1日分の休業補償と通院交通費の請求期限

・2021年2月3日までが、2019年2月3日分の休業補償の請求期限

・2021年2月5日までが、2019年2月5日の休業補償と通院交通費の請求期限

ご遺族の方の請求(申請)期限

葬祭料は被災者の死亡の翌日から2年、遺族年金・一時金は死亡の翌日から5年で時効となります。なお、被災者が療養中に請求せずに未請求となった給付(休業補償・移送費)はご遺族の方が請求をすることができますが、時効については死亡時点とは関係がなく、請求事由が発生した時点の翌日から起算して2年で時効となります。

特別遺族給付金

中皮腫と診断され、多くの患者さんやご家族の方々は目の前の治療・療養の最善を模索されます。そのため、労災請求の手続きをせずにご遺族になられて、5年の時効を迎えてしまう方もおられます。そのようなご遺族様には、石綿健康被害救済法に基づく、特別遺族給付金の制度があります。この制度は、現状、時効がありません。例えば、患者さんが何十年も前にご他界された場合でも、死亡届(原則として、法務局で27年間は保存)などから「中皮腫」の病名が確認されれば、認定につながる可能性があります。認定された場合、「特別遺族年金」ないしは「特別遺族一時金」が支給されます。石綿による中皮腫被害の労災時効救済認定で遺族給付:北海道の事例のようなケースもあります。中皮腫・アスベスト疾患のご遺族への労災保険制度や石綿救済制度での補償や給付も参考にしてください。

特別遺族給付金の請求から支給までの基本的な流れは次のようになります。

①請求(相談)
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②戸籍謄本または抄本の確認
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③対象疾病で被災者が死亡したことの確認
死亡診断書、死体検案書、検視調書に係る法務局の証明書の確認。ないしは、それに代わる書類(死亡診断書等の原本又は写し、診療録、生命保険関係等の書類)
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④労働者としての雇用事実の確認
従事した事業場名および所在地に関する関係資料、同僚等関係者の申立、請求人の申立
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⑤業務上外の判断
医学的資料に関する調査+石綿ばく露に関する調査
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⑥支給・不支給の決定

中皮腫・アスベスト(石綿)労災請求方法と認定

石綿ばく露の具体的状況を労働基準監督署に可能な限り理解してもらうことが認定への最短距離となります。認定(不認定)された場合でも、内容に不服があれば申し立てをして決定が見直されることがあります。

「意見書」と請求書類の提出

労災保険の申請については、請求書に医師証明や事業主証明をもらった上で労働基準監督署に提出し(療養補償については、医療機関を通じて労基署に提出)、それを基に労働基準監督署が調査を行って支給するかどうかが決められます。事業主証明について、会社が廃業している場合は不要です。事業主が証明を拒否する場合も珍しくありませんが、その場合は証明をしてもらえない理由を書面でもらって、労働基準監督署に提出してください。証明がないことで直接的に不認定につながるわけではありません。

また、ごく稀に主治医が休業の必要はないとの理由で、通院日等以外は休業の必要はないとして部分的な日数に対してしか証明をしてくれないことがあります。このような場合は、ご相談を頂きながら進めることをおすすめ致します。

請求書は最寄りの労働基準監督署でもらうことも、厚生労働省のHPからダウンロードすることも可能です。請求にあたっては、どのような形で石綿ばく露をしたのかを「意見書」のような形でまとめておくことをお薦めします。そのことによって、できるだけ具体的にばく露状況をご自身でも整理でき、労働基準監督署の調査もスムーズになされます。

「標準処理期間」が請求から半年と定められていますが、事案によって数ヶ月から1年以上と決定までの時間に差が生じます。場合によっては、労働基準監督署で判断ができずに厚生労働省本省に照会されて時間がかかることもあります。

労災請求には、請求を受け付けるしきたりや手順があり、そこから外れるものは請求に行っても難色を示されます。例えば、「主治医の証明」や「事業主の証明」などが無いと、それらをもらってからまた来てくださいと言われる場合があります。しかし、患者様の中には、必ずしも時間的余裕の無い方がいることも事実ですので、一部の形式を省いて調査を進めることが大切になる場合もあります。私たちがサポートに入り、事情を説明すれば労働基準監督署は極めて迅速な対応をしてくれます。

決定内容に不服がある場合は審査請求・再審査請求

労災が認められなかった場合や、労災認定はされた場合でも給付の基礎となる「平均賃金」の金額が誤っていることがあります。このような決定をされた場合でも、請求された方には「二度の異議申し立ての権利」があります。「審査請求」と「再審査請求」です。

「審査請求」は、決定に不服がある場合に、「その決定があったことを知った日の翌日から起算して3ヶ月以内」に、決定をした労働基準監督署を管轄する都道府県労働局に置かれている労働者災害補償保険審査官(以下、審査官)に申し立てをするものです。審査官に、必要事項を記入した「労災保険審査請求書」を提出します。提出後、「口頭意見陳述」の実施を審査官に求めます。口頭意見陳述は、審査官に対して口頭で意見を述べることができ、原処分庁に対しても原処分の決定内容や認識等について質問できる機会となります。通常、1回かぎり、1時間程度の時間が確保されていますが、過去には北海道において2時間以上かけて審理をしたこともありますし、原処分庁が不誠実な対応に終始したために審理を再設定した事案もありました。「行政不服審査法 審査請求事務取扱マニュアル(審査庁・審理員編)」には、「処分庁等に対する質問に対しては、法律上、処分庁等の回答義務についての明示的な規定はないが、処分庁等は審理において協力すべき責務を有しており(法28条)、申立人の質問権が規定された趣旨に鑑みれば、処分庁等が質問に対して適切に回答すべきことは当然であり、処分庁等の回答は、原則として口頭意見陳述の場で行われるべきである」(p.68)と記されています。この記載に反するような不誠実な対応を原処分庁がした場合は、この点を審理員である審査官に指摘しましょう。

「再審査請求」は、審査請求でも申し立てが認められなかった場合に、「審査官から決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2ヶ月以内」に、労働保険審査会に申し立てをするものです。同審査会に、「労働保険再審査請求書」を提出します。再審査請求は申し立て後、約半年後に「事件プリント」と言われる、労災請求や審査請求にあたって請求人が提出した書類や原処分庁が作成した書類、審査官が収集した書類などが集約された書類が届きます。あわせて、一方的に審理期日が指定されます。欠席の場合でも、不利になることはないとされていますが、口頭で審査にあたる合議体(3名の委員で構成)に意見を述べることができ、使用者側と労働者側の参与を含めて質疑を受ける機会ともなります。

審査請求・再審査請求はいずれも、申し立てが認められるためのハードルは決して低くはありません。過去には、国会において「毎月95万円もらっている委員が95%棄却している、こんなふうに言われたということがあるそうです」(平成26年5月15日、第186回国会衆議院総務委員会)と指摘されることもある程です。しかし、これら申し立てで決定が覆った事案も少なからずあり、その決定がその後の被害にあわれた方々の労災請求や給付支給に大きな影響を与えたこともあります。

中皮腫・アスベスト(石綿)労災認定後の企業補償・国家賠償

労災制度は「無過失責任」に基づく制度ですので、使用者(会社・企業)の過失の有無とは無関係に、一定範囲の損害に対して給付が補填されます。しかし、治療費・休業損害・逸失利益・慰謝料の全てが補填されるわけではありません。労災認定された方の中には、会社が存続している場合には会社に対して、会社が廃業している場合でも一定の条件にある方は国に対して賠償を求めることが可能です。雇用されている、されていた会社がある場合はまず、アスベストユニオンに相談をしてみましょう。

詳細は、「中皮腫・肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚などのアスベスト(石綿)疾患の救済・労災・補償・損害賠償(和解)での給付金」をご確認ください。

中皮腫・アスベスト(石綿)労災でよくある問い合わせ(Q&A)

Q1 中皮腫と診断されたのですが、やはりアスベスト(石綿)との関連がわかりません。

中皮腫患者さんの中には、本人もあまり石綿ばく露を自覚しておられない方もいます。代表的には造船所が非常に多くの間接ばく露のある職場であることは、これまでの労災認定事例や裁判などを通じて明らかにされています。『アスベスト読本―造船の街からの警鐘』には英国の造船所におけるアスベスト濃度測定データの報告を図式化したものが紹介されています。この中では、吹付け作業の遠く離れた場所においても、階層を重ねて飛散をしている実態が科学的に明瞭であることがわかります。

平成18年10月に厚生労働省設置の「石綿に関する健康管理等専門家会議マニュアル作成部会」が取りまとめた、「石綿ばく露歴把握のための手引〜石綿ばく露歴調査票を使用するに当たって〜」の中では、「フィンランドにおいて石綿鉱山に源をもつ石綿繊維が27km飛行したことが記録されていますし、アメリカでは、太さ0.1ミクロン・長さ10ミクロンおよび、太さ1ミクロン・長さ50ミクロンの石綿繊維が、毎分ほぼ4.5メートルの風にのって、それぞれ1120キロ及び13.3キロ移動した事が報告されて」(p.4-5)いる、との海外文献に基づいた記載があります。

さらに、「石綿繊維は数ミクロン単位という微細な繊維であり、1本1本は肉眼で捉えることができないため、石綿が空気中で著しい高濃度に達しても肉眼的には『きれいな』空気です」(p.5)とあります。吹付け石綿除去工事後の再飛散の再現実験のデータも紹介され、「肉眼的には空気は全く実験前と変わらずキラキラもせず、そのことに驚かせた」(p.5)との再現実験参加者の見解も示され、「石綿工場で働く労働者や吹きつけ石綿に関する作業を行う労働者が気づかずに高濃度ばく露をうけることが理解できる光景です」(p.5)とあります。

石綿が吹付けられた環境内でのばく露によって、これまでの多くの労災認定事例から言っても、吹付け作業が終ったあとの同一、周辺空間のばく露が看過できないことは明らかです(参考:建物アスベスト被害WEBサイト)。

これまでの認定事例などは、「労災保険の認定事例等」をご確認ください。石綿関連疾患の国際的な診断基準を示した、ヘルシンキクライテリア「コンセンサスリポート」(1997)では、「約 80%の中皮腫患者には、何らかの石綿への職業的なばく露があった」と教示しています。

(社)日本石綿協会が示しているように、日本には約1,000万トンの石綿が輸入されています(「日本におけるアスベスト輸入量」)。下の図は環境省が石綿の輸入量から今後の被害者数を推計したものになります。これによれば、2030年頃まで中皮腫患者は増えると予測されています。

アスベスト(石綿)輸入量
環境省作成:石綿輸入量に基づく中皮腫患者数の推計(情報公開請求により取得)

中皮腫などの原因となるアスベストは主に、①建築関連(大工、左官工、電気工、配管工など)の職種ほぼすべて、②アスベストを含む製品(建材、ブレーキライニングなど)の製造、③自動車(バス運転手含む)、鉄道、船舶の製造や修理、④鉄工、ガラス製造、⑤アスベスト原料の運搬や荷揚げ(運輸業、港湾関係など)といった職種の場合、アスベストそのものやアスベストが含まれる建材・製品を直接加工したり、アスベストの粉じんが出る環境の中で働き、アスベストの粉じんにばく露している可能性があり、労災の対象と流可能性があります。

また、アスベストを含む滑石(タルク)を使用していた看護師や美容師の方で発病したケースや、学校の体育館の天井に石綿が吹付けられていた場合もあったことや、一昔前の理科の授業などで石綿金網が使用されていたことなどから、教員の被害なども確認されています。

厚生労働省がHPで、『「石綿にさらされる作業に従事していたのでは?」と心配されている方へ』と題して、石綿にさらされるおそれがある作業例について、写真入りで解説しています。

労災の給付と救済制度の給付内容には明らかな格差があり、まずは労災請求を模索するのが基本です。すでに不認定になっている場合でも、労働基準監督署の決定に誤りがあれば、新たに処分をして認定になる事例もあります。上述したように労働基準監督署に、難しいと言われて請求を諦めた方々に対して私たちのサポートによって認定につながった方々も数多くいます。ご協力を惜しみませんので、諦めないことが大切です。

あなたが働いていた会社があるかもしれません

厚生労働省は石綿労災認定事業場を公開しています。2019年11月28日に2018年の中皮腫による死亡者数を発表しました。それによると、2018年には1512人の方が中皮腫によって死亡したとされています。男女別では、男が1275人、女が237人となっています。都道府県別にみると、最も多かったのが大阪府の137人。次いで東京都の135人、兵庫県の129人、神奈川県の104人、埼玉県・愛知県の各89人となっています。
2017年の死亡者数が1555人でしたので、2018年は「微減」となっていますが、被害者数の将来予測では2030年頃まで増加する推計もありますので、今後も注視していく必要があります。なお、統計では中皮腫の部位別の数字は出されていません。

Q2 中皮腫と診断されました。思い当たる原因のアスベスト(石綿)ばく露が数週間や数ヶ月なのですが、認定されるのでしょうか。

中皮腫の確定診断と、アスベストにばく露する作業に従事していた期間(アスベストばく露作業従事歴)が1年以上あれば、労災として認定されます。アスベストの吹き付け作業や解体作業など、高濃度のアスベストにばく露したケースでは、1年に満たない従事期間でも労災として認定される可能性があります。事務職のような場合でも、飛散しやすい吹き付けアスベストがあった建物内で働いていてばく露し、労災として認定されたケースが複数あります。

石綿ばく露と中皮腫発症に関する閾値が確立していないことは、厚労省設置の「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会」による、平成18年2月の「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する」報告書で、中皮腫は「石綿の低濃度ばく露によっても発症する」(p.9)との見解からも確認できます。

阪神・淡路大震災では「1ヶ月の石綿ばく露」で認定も

阪神淡路大震災に関連しては、これまでに少なくとも5人が労災や公務災害で認定されています。このうち、一人の被害については元警察官でしたが、震災直後の1ヶ月に神戸市長田区での救護・警戒活動に従事した際に被災地で飛散していた石綿にばく露したとして中皮腫を発症したとして公務災害認定されています。

石綿労災認定基準は厳しすぎるとの判決

肺がんを含めたアスベスト関連行政訴訟の中には、2018年には名古屋高裁で、中皮腫で死亡した男性の遺族が労災不支給の処分取り消しを求めた裁判で、裁判所は業務上災害との判断をすると同時に、次のような判示をしています。

・わが国における中皮腫の労災認定において、本認定基準が、厚生労働省本省との協議とするか否かを区切る基準として、「石綿ばく露期間1年以上」を設定したことは、十分な医学的根拠に基づくものということはできず、ばく露期間1年未満の中皮腫を一律に本省との協議とすることに合理性は認められない。

・わが国の中皮腫の労災認定基準において、仮に、厚生労働省との協議とするか否かを区切る基準としてばく露期間の要件を設定する必要があるとしても、それはせいぜい2、3か月程度を限度とするべきであると考えられるし、設定されたばく露期間の要件を満たさないものについても、就労場所におけるばく露状況等を検討することによって、中皮腫の発症に業務起因性を肯定すべきものが存在するというべきである。

Q3 アスベスト(石綿)ばく露の原因はあるのですが、会社がありません(廃業)。

働いていた事業所がすでに廃業していたり、その事業場が労災保険に入っていなかった場合にも、あるいは原因が複数の事業所にまたがっている場合でも労災保険の対象になります。発病時に退職していた場合でも労災保険の対象となります。最後にアスベストを吸ったと考えられる会社(事業所)が残っている場合には、労災請求にあたって「事業主証明」を依頼することになりますが、会社から協力を拒否されても請求ができないわけではありません。会社が廃業していても認定された事例会社(事業場)が証明をしてくれない事例をご確認ください。

Q4 自営業者や一人親方、俳優などの自由業はアスベスト労災の対象にならないのでしょうか。

特にご注意頂きたいのは、建設業関係者の方の中には、「一人親方」や「自営業」であるので労災の対象にはならないと思われている方が多くいます。若い頃に誰か(どこか)に雇われて日給月給などで仕事をしていれば、その期間は労災の対象になる可能性があります。また、「一人親方」や「自営業」と思っていても、実態は特定の親方などから日当をもらって仕事をしている「労働者」と考えられる方もいます。労働者なのかどうか疑問に思われる方もおられるでしょうが、これまでに「劇団員」の石綿労災の認定事例もあります。

中皮腫をはじめとするアスベスト疾患を発症された方は、安易に労災請求を断念せず、必ずお問い合わせください。労働基準監督署や環境再生保全機構の不十分な説明によって、労災請求をあきらめておられる方が現在も少なくありません。

Q5 アスベスト労災の相談で労働基準監督署に行ったのですが、請求を受け付けてくれませんでした。

「請求拒否」いうのは、形式的にないとされていますが、事実上、そのような扱いをされている、結果的にそのような形になったという事例は近年でも出ています。患者さんやご家族の立場から言えば、「請求断念」となります。2017年に北海道労働局管内の某労働基準監督署でそのような事例が発生し、結果的に労災認定されたのち、当該労働基準監督署が遺族に謝罪するといったこともありました。断念をしたことで、一部の請求権が時効となってしまい、「受けられるはずだった給付」の受給権が消滅してしまう方もおられます。いかに労働基準監督署の対応に不備があったとしても、過去に遡って請求権を復活させることはできません。

Q6 地方公務員だったのですが、アスベスト(石綿)ばく露をした期間に地方公務員災害補償法が施行されていませんでした。

地方公務員災害補償法が施行されたのは1967年12月ですが、それ以前に公務員として石綿ばく露をして中皮腫等の石綿疾患を発症した方もおられます。2019年2月には、1960年から63年にかけて大阪府で水道関連業務に従事して、2013年に胸膜中皮腫を発症して死亡した男性について労災認定された事案がありました。労働基準監督署は、「当時使用されていた水道管が石綿含有であったことなどを考慮すれば、暴露する機会があったと判断するほうが自然」と判断しました。公務災害にあたる方が、法施行前であれば労災請求が可能であり、認定される可能性があります。

Q7 家族が本土復帰前の沖縄米軍基地でアスベスト(石綿)にばく露して病気発症して亡くなったのですが、何か補償はあるのでしょうか。

沖縄県が本土復帰前に米軍関係労働者が石綿ばく露をして病気を発症して死亡するケースもあります。日本とアメリカの間では協定によって、復帰前の石綿ばく露による被害は労災保険給付の請求権がないとされています。このような形で被害を受けた遺族は、「布令42号」による補償を受けることができますが、中には請求権が「時効」となってしまっている方もいます。厚生労働省は2011年に通達「沖縄復帰前に労働者災害補償の適用を受けていた米軍関係労働者に係る石綿による健康被害の救済に関する法律の適用について」を発出しました。これにより、時効となった遺族については石綿健康被害救済法に基づく「特別遺族給付金」の対象となりました。

Q8 家族が50年以上も前に中皮腫や肺がんで亡くなっているのですが、アスベスト労災の認定にはならないのでしょうか。

一般的に、労災保険制度には前述したように時効がありますが、アスベスト被害については事実上、撤廃されています。石綿救済制度にもとづく特別遺族給付金の制度によって認定される可能性があります。肺がんの場合で、治療をしていた病院にカルテやレントゲン画像が残っていなくとも、働いていた会社で労災認定事例が出ている場合などであれば認定される可能性があります。

Q9 肺がんの多くはタバコが原因ではないでしょうか。本当にアスベスト労災請求をして認められるのでしょうか。

喫煙歴が肺がんの発症に関係がないわけではありませんが、喫煙歴と切り離して審査がなされます。アスベスト肺がんと労災制度をめぐる全体像をまずは確認してみてください。

Q10 蛇紋岩でもアスベスト被害が出ていると聞いたことがあります。

これまでに蛇紋岩の加工をしていた造園業でお仕事をされていた方が石綿肺がんを発症されて、労災認定されています。石綿は、他の鉱物にも含有していることがあり、無意識にばく露してしまうことがあります。

Q11 国からアスベスト労災は支給されています。他に何か国から給付はあるのでしょうか。裁判はできるのでしょうか。

労災の給付は、アスベスト疾患を発症して生じた損害の全てが補填されるわけではありません。労災保険制度は、国の責任を前提として給付されるものでもありませんし、事業主(企業)の責任も同様です。労働組合を通じた団体交渉などで補償される被災者の方も少なくありません。

Q12 元自衛隊員でした。中皮腫を発症しましたが、公務員もアスベスト労災請求(申請)できるのでしょうか。

公務員時代にアスベストばく露をした可能性があり、その前後に民間の会社などにお勤めで石綿ばく露の可能性がなければ、基本的に労災請求はできず、公務災害での請求となります。自衛隊の方であれば、まずはこれまでの自衛隊員の中皮腫や石綿肺がんなどのアスベスト被害の実態を確認してみてください。

Q13 アスベスト労災で認定され休業補償を受給していますが、体調が良くなったので仕事に復帰したいと考えています。仮に、復帰したにも関わらず体調が悪くなってしまい再度休むようになった場合に休業補償は支給されるのでしょうか。また、仕事復帰した場合に遺族年金が支給されなくなったりしないのでしょうか。

休業補償給付は、疾病を原因として労務不能となり、給与等の支払いがなされない場合に支給されるものです。仕事に復帰して、給与等が支払われる場合は原則として支給されません。ただし、通院した日や体調が悪く休んだ日があった場合(手帳などにどのように体調が良くなかったのかを記録として残しておきましょう)などに給与が差し引かれた場合は、その日数に応じて休業補償給付が支給されます。また、職場復帰して一時的に休業補償給付の支給がなくなった場合でも、遺族補償給付の支給には何の影響もありません。

Q14 死亡診断書の死亡原因に「がん性胸膜炎」や「間質性肺炎」などの記載がされていてもアスベスト労災で認定されるのでしょうか。

「がん性胸膜炎」は肺がんの可能性があります。また、「間質性肺炎」はじん肺が基礎的な病変となっている可能性があります。死亡診断書の記載も重要ですが、本来的に労災対象疾病の可能性があります。病理組織やCT・レントゲン画像など診療記録を確認すれば判断できる場合があります。

Q15 アスベスト労災では「発症年月日」が決められ、休業補償給付の支給開始などに影響すると聞きました。中皮腫の場合は「確定診断された日」がそれにあたるのでしょうか。

中皮腫の労災上の発症年月日は、確定診断のなされた日ではなく、「現実に療養が必要となった日」です。一般的には初診日となります。一方、石綿肺を含むじん肺症と合併症については管理区分決定の根拠ないしは合併症の根拠となる検査を実施した日を確定診断日とします。

Q16 家族がアスベストの仕事をしていて、肺がんで亡くなったのですが、死亡診断書に「原発性」の記載がありません。労災での認定は難しいでしょうか。

アスベストの労災認定基準では、肺がんについては原発性肺がんであることが必須要件です。しかし、死亡診断書に「原発性」の記載がないことをもって認定されない理由にはされません。例えば、「転移性肺がん」や、肺がんの原因として「大腸がん」などの記載があり、明らかに原発性を否定する医証がある場合などは認定されません。

Q17 家族が何年も前に「肺がん」で亡くなったのですが、診療記録などの医証がまったく残っていません。アスベスト労災での認定は難しいのでしょうか。

被災者の方の死亡から5年以上が経過しており、特別遺族給付金の請求が検討できるかと考えられます。肺がんは、タバコなどのアスベスト以外の有害物質でもリスクを高めますので、レントゲンやCTなどの画像や病理組織からアスベストばく露に関係する所見などが確認できないと基本的には認定されません。ただし、過去に同一事業場や労災認定者(同一構内における下請け事業者の認定含む)などが出ている場合や被災者の石綿ばく露が高濃度作業に該当すると考えられる場合は認定される可能性があります。

Q18 肺がんの関係でアスベスト労災の遺族請求を考えています。石綿肺がんの認定基準に「石綿肺の所見」があれば認められる基準がありますが、石綿肺の有無についてはレントゲン写真で確認してもらわなければいけないのでしょうか。

石綿肺(アスベスト肺)についてはまず、じん肺管理区分の決定がされているのかを確認し、それに係る資料から「石綿肺」であることが確認できる場合には、所見があると判定されます。じん肺管理区分決定に係る資料で石綿肺かどうかを確認できない場合やじん肺管理区分決定がされていない場合は医療機関からレントゲン写真の画像を取得し、審査を経ることになります。審査の段階で、管理2以上に相当する石綿肺かどうかが焦点です。画像資料がない場合でも、剖検記録や手術記録、診療録などの記載内容から、じん肺審査医がじん肺管理区分が管理2相当以上の石綿肺と判断できる場合は石綿肺ありとされます。

Q19 家族が中皮腫の疑いがあり入院しています。主治医から、中皮腫とはっきり確定するためには病理組織検査で確定診断しないといけないが、年齢や現在の病状からリスクが伴うために検査ができないと言われています。確定診断ができなければアスベスト労災の認定は難しいのでしょうか。

確定診断できない場合は、画像所見や臨床検査結果および経過、他疾患との鑑別などを総合して判断されます。ただ、精度の高い診断としては病理組織検査が必須ですので、場合によっては患者さんのご他界後に剖検(解剖)を検討することもできます。医療機関によって、病理医の在籍状況などから解剖できる病院とそうでない病院があります。仮に、入院中の医療機関では解剖ができない場合でも「受託病理解剖」と言って、院外でお亡くなりになった患者さんの解剖を引き受けてくれる医療機関もあります。日本病理学会が発表している病理解剖受託施設も紹介されていますが、掲載されている以外の医療機関でも受け入れてくれるケースがあります。

Q20 家族が中皮腫で亡くなったのですが、生前(若い頃)に造船所でアスベストを扱って働いていたと聞いていたのですが、社会保険や雇用保険の記録などには記載が出てきません。労災認定は難しいでしょうか。

同僚などの方はおられないでしょうか。また、患者さまの若かった時代の就職先をごキョウダイの方などが覚えていることもあり、そこから調査を進める手がかりとなることもあります。また、転職等していれば採用時の面談等で履歴書を提出している可能性もあります。特に、公的機関であれば何十年も前の採用時の履歴書を保管しているケースもあります。何らかの糸口を見つけ、諦めないことが大切です。

Q21 10年以上前に亡くなった家族がアスベスト(石綿)の病気で亡くなったのかどうか確認したいのですが、病院に問い合わせたところ何の資料も残っていないと言われました。労災の請求はあきらめるしかないでしょうか。

お手元に、「死亡診断書」は残っていないでしょうか。もし見当たらなければ、死亡時に居住していた地域を管轄する法務局に問い合わせをしていただき、死亡診断書の写しが保管されているかもしれません。死因に「中皮腫」、「肺がん」などが書かれていれば、労災認定につながっていきます。法律によって死亡届出から27年間の保存が義務付けられています。ただし、地方法務局によっては廃棄しているところなどもあり確認が必要です。

Q22 父が中皮腫で、母が肺がんで治療しています。主治医から中皮腫も肺がんもアスベストが原因だと言われました。主治医に労災の書類への証明をお願いしようと、病院の窓口へ依頼に行ったところ、「会社の証明」と「労災保険番号」が書かれていないので受付できないと言われました。父と母が働いていた会社は何十年も前に廃業しており、労災保険番号もわかりません。

病院の受付の方が遅発性疾病であるアスベスト労災などの対応に慣れていないのかもしれません。事業主証明や労災保険番号が未記載でも、労働基準監督署は調査をしてくれます。窓口の方に事情を説明して受け付けて頂けないか話をしてみてください。難しそうな場合は、請求予定の労働基準監督署の労災課へ電話をして事情を説明してあいだに入ってもらうのが良いかもしれません。お困りの場合はご連絡いただければサポート致します。

Q23 あなたの中皮腫はアスベストが原因の中皮腫ではないので労災請求はできないと医師から言われました。どうやら病理組織検査の結果、そのような判断になったようです。やはりアスベスト労災の請求は難しいのでしょうか。

中皮腫かどうかを判断するのに病理組織検査は重要です。しかし、病理組織検査によって発症した中皮腫がアスベストが原因かどうかは判断できません。アスベストが原因かどうかは、詳細なアスベストばく露歴(居住・生活歴、職歴等)の確認が必須です。また、アスベストばく露がただちにわからない場合でも、それ以外の原因だと判断する指標はありませんし、お医者さんの多くもアスベストばく露を調査する専門家ではありません。

【参考資料】

厚生労働省 石綿による疾病の労災認定
厚生労働省 労働災害が発生したとき
厚生労働省 「石綿にさらされる作業に従事していたのでは?」と心配されている方へ
独立行政法人環境再生保全機構 労災保険給付(労災保険制度)

認定NPO法人キャンサーネットジャパン 石綿が原因の病気、中皮腫等に対する社会保障制度

石綿ばく露作業による労災認定等事業場一覧(全国労働安全衛生センター/中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会)

・神戸新聞(2020年1月10日)「阪神・淡路被災地 見回りの元警察官死亡は『公務災害』 石綿禍 活動1カ月で認定」

・毎日新聞(2020年1月12日)「石綿 公務員を労災認定 『補償法』施行前の被害救済 大阪・中皮腫死亡」