アスベスト(石綿)肺がんを発症した木造大工の労災認定事例:北海道・札幌

アスベスト肺がん中皮腫などのアスベスト疾患に罹患した方は労災制度救済制度による公的給付を受給できる可能性があります。また、これらの受給後には企業や国に対する損害賠償などを検討することもできます。

今回は北海道で木造大工として石綿ばく露をしてアスベスト肺がんを罹患した方が労災請求し、認定された事例を紹介します。

アスベスト肺がん(左上葉肺癌)を発症

Aさんは2014年に健康診断で異常陰影を指摘されました。医療機関を受診し、病理組織検査(組織診(生検)および細胞診)の結果、原発性の腺がん(左上葉肺癌)の診断を受けました。

幸いに、比較的早期の発見であったことから、左肺の3分の1を摘出する手術を受け成功しました。それでも術後の数ヶ月は、常に息が苦しい状態で、散歩や自転車の運転でも息が切れる状態でした。

木造大工としてアスベストばく露で労災認定の可能性

被災者のAさんは昭和40年代前半から10年以上にわたって、季節雇用の木造大工として働いてきました。グラスウール、石綿スレート、木毛板、石膏ボードなどの建材を加工する作業に従事してきました。一般住宅および公共住宅の新築・増改築工事、学校の体育館や北海道内の公共施設の床はり作業をしてきました。ガンタッカー(建築用ホッチキス)を扱うような作業、セメントにモルタルをまぜるような作業、クロス貼り、外壁のサイディング作業、外壁保温工事、建築資材の貼り付け作業終了後の掃除など、これらの作業でアスベストにばく露しました。スレート板はカッター、耐火ボードやサイディング材は丸鋸で切断していました。

当時は作業中にキラキラとホコリが舞う中での作業でしたが、アスベスト粉じんが身体に悪いという認識はなく、マスクなどの防護具などもせずに作業をしてきました。

胸膜プラークは無いが、大量の石綿小体で労災認定

アスベスト肺がんの労災認定にあたっては労災認定基準が定められていますが、多くの認定者は「10年以上のアスベストばく露作業従事歴+胸膜プラーク」の基準で認定されています。しかしAさんは診断時も、労災局医の判定でも胸膜プラークは確認されませんでした。また、石綿肺やびまん性胸膜肥厚の所見もないとされました。

しかし、Aさんが手術時に摘出した肺組織で石綿小体の計測(計測実施機関:独立行政法人北海道中央労災病院)をしたところ、労災認定基準の5,000本以上/乾燥肺1gを上回る、10,000本以上/乾燥肺1gが検出されました。

石綿労災の肺がん認定基準は次のとおりですので、Aさんは労災認定される運びとなりました。

「原発性肺がん」であり、次のいずれかに該当

①第1型以上の石綿肺所見がある
②胸膜プラーク所見がある+石綿ばく露作業従事期間が10年以上ある
③広範囲の胸膜プラーク所見がある+石綿ばく露作業従事期間が1年以上ある
※「広範囲の胸膜プラーク」とは、⑴胸部胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな 陰影が認められ、かつ、胸部CT画像によりその陰影が胸膜プラークとして確認される場合、⑵胸部CT画像で、胸膜プラークの広がりが胸壁内側の1/4以上ある場合、のいずれかを指す
④石綿小体または石綿繊維の所見がある+石綿ばく露作業従事期間が1年以上ある
⑤びまん性胸肥厚の所見がある
⑥「石綿紡織製品製造作業」、「石綿セメント製品製造作業」、「石綿吹付作業」で石綿ばく露作業従事期間が1年以上ある

出典:中皮腫ポータルサイトみぎくりハウス 中皮腫・アスベスト(石綿)疾患の原因と労災保険制度認定と相談

石綿小体や石綿繊維の計測にあたっては、必ずしもその計測技術が確立しているとは言い難く、これまでに労災制度と救済制度で測定値が異なるケースなども発生しています。

喫煙歴はアスベスト(石綿)労災認定に影響しない

Aさんは、肺がんの発症までに1日あたり15本ほどの喫煙歴がありましたが、肺がんの発症後にやめました。

労災認定の審査にあたっては、喫煙歴は一切考慮されません。あくまでも、石綿ばく露作業の年数やその他の医学的所見の有無によって判断されます。この点、医師も含めて安易に「タバコが原因」と判断されることも散見されます。

自己判断や主治医の判断だけで労災認定の可能性を決めず、アスベストばく露やその可能性がわずかでも心当たりがある方、特に建設業に従事された方はご相談ください。