中皮腫の治療

中皮腫の治療について

中皮腫は病期(がんの進行)によって治療内容が異なります。

I期およびII期の場合には手術が行われることがあります。しかし、このような大きな手術でも、完全にとりきれないこともあり、胸膜のなるべく広い範囲を切除して胸水の貯留を防ぐような対症的な手術が放射線療法や化学療法と併用して行われることもあります。

III期以上の病期で、手術によってすべての病変をとりきることが困難な場合には、放射線療法や化学療法が行われます。がんが広範囲に進展し切除が困難な場合には、患者さんの希望や全身状態により抗がん剤による化学療法を行うか、症状を緩和する対症療法(緩和ケア)を行うこともあります。

なお、特定非営利法人 日本肺癌学会から肺癌診療ガイドライン(肺癌診療ガイドライン2018年度版-悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む –)が出ていますのでご参考にしてください。

【参考文献】

>国立がん研究センター がん情報サービス-中皮腫 基礎知識-

>国立がん研究センター 希少がんセンター -悪性胸膜中皮腫-

>がん情報サイト Cancer Information Japan -悪性中皮腫の治療(PDQ®)-

 

手術について

手術には

①肺、胸膜や場合によっては横隔膜や心膜ごと切除する胸膜肺全摘術(EPP)

②肺を温存する術式(胸膜切除/肺剥皮術、P/D)

があります。

両術式は2008年に生存率に差が無かったとの論文が発表されていますが、手術自体を行っている医療機関が少ないために、主治医、がん相談支援センター、患者会などに相談したうえで治療実績がある医療機関にセカンドオピニオンを行うことも今後の治療方針を決めるための重要な手段の一つです。

 

手術適応:推奨

臨床病期Ⅰ-Ⅲ期の選択された一部の患者に対して手術を行うことを考慮してもよい。(グレードC1)

手術適応判定は呼吸器外科医を含む集学的治療チームにより判定することが勧められる。(グレードA)

a.手術の利益:切除可能中皮腫において外科的切除が生存率を改善するか否かは明らかでない。

b.手術の目的:手術の目的は肉眼的完全切除である。

c.集学的治療:集学的治療により許容し得る周術期リスクと遠隔予後が得られる可能性がある。

【参考文献】

>兵庫医科大学病院 呼吸器外科

>国立がん研究センター がん情報サービス -中皮腫 治療の選択-

日本肺癌学会 悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン -外科治療-

 

抗がん剤療法について

抗がん剤療法とは薬剤を用いてがん細胞を殺すかまたは細胞分裂を停止させることでがん細胞の増殖を停止させるがん治療のことです。中皮腫に対する化学療法の中心的薬剤(抗がん剤)は、ペメトレキセド(商品名:アリムタ)で、この薬にシスプラチンを組み合わせた併用治療(シスプラチン+ペメトレキセド)が標準的治療として用いられます。

ただ副作用として心臓への影響として動悸や不整脈、また肝臓や腎臓に障害が出ることもあります。副作用が著しい場合には治療薬の変更や治療の休止、中断などを検討することもあります。

しかしかつては苦しい治療であった化学療法も今は支持療法の進歩により副作用がかなり軽減され、外来通院での化学療法へスムースに移行できるようになっています。

【参考文献】

>オンコロ 中皮腫の治療 – 化学療法 –

>国立がん研究センター がん情報サービス -中皮腫 治療の選択-

 

放射線療法について

放射線療法は、高エネルギーの放射線をがんの存在する範囲に照射して、がん細胞に傷害を与えて小さくする方法です。がんの痛みに対して放射線治療を行うと、多くの患者さんで痛みが軽減されることが示されています。

副作用は主として放射線が照射された部位に起こります。主なものは、放射線治療中や終わりごろから症状が強くなる放射線による特殊な肺炎、食道炎、皮膚炎です。肺炎の初期症状は、咳や痰(たん)の増加、微熱、息切れです。食道炎では固形物の通りが悪くなり、胸やけや痛みを伴うこともあります。症状が強いときには放射線治療を延期・中止し、痛みがある場合は食事・飲水制限を行い、鎮痛薬の服用や栄養剤の点滴で対処します。また、全身の副作用としては、だるさ、食欲低下、白血球の減少などがあり、個人によって程度が異なります。症状が強い場合は、症状を和らげる治療をしますが、通常は、治療後2週から4週ぐらいで改善します。

最近では陽子線治療、サイバーナイフなどの新しい治療機器を用いた放射線療法もいろいろながんに対して使われるようになってきましたが、中皮腫に対しては、これらの新しい放射線治療手段が、従来の放射線治療手段よりも優れているかどうかは、まだわかっておらず、これからの研究(臨床試験)によって明らかにされると期待されています。

【参考文献】

>国立がん研究センター がん情報サービス -中皮腫 治療の選択-

>国立がん研究センター 希少がんセンター -悪性胸膜中皮腫-

 

免疫療法とは

そもそも私たちの体の中で、「自分の体の細胞」ではないものを「異物(いぶつ)」と呼びます。細菌やウイルスなどは「異物」の代表例ですが、体には異物の侵入を防いだり、侵入してきた異物を排除したりして体を守る抵抗力が備わっています。

免疫療法とは、免疫本来の力を回復させることによってがんを治療する方法です。

2018年は免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ(商品名:オプジーボ))も悪性胸膜中皮腫の適応になり、新時代の治療エビデンスが実臨床で展開されつつあります。

しかし効果が認められている治療でもすべての患者さんに効果があるわけではなく、一定の割合の患者さんに効果があることがわかってきました。そのために治療を行う場合は主治医とよく相談をして、副作用が出てきたときや病状が悪化したときに適切な対応ができるようにしておきましょう。

そして現状では「免疫療法」はさまざまな治療法を含んだことばであり、有効性が科学的に証明されていないものも存在します。効果が明らかになっていない治療法は、健康保険の適用する治療(保険診療)ではないことから、患者が全額治療費を支払う自由診療として行っている医療施設もあります。

注意事項として標準治療を行っている医療機関で治癒を目的とした治療が難しくなり、主治医から緩和医療の必要性を告げられた方に免疫療法を希望される場合があります。その場合に免疫療法を行う医療機関の担当医に副作用が出た場合や病状が悪化した場合にどのような対応をしてもらえるのかを十分に確認することをお勧めします。標準治療を行った医療機関と免疫療法を行った医療機関双方の受診が途切れてしまい、行き場を失ってしまう「がん難民」にならないように注意しましょう。

【参考資料】

国立がん研究センター がん情報サービス -免疫療法 まず、知っておきたいこと-

国立がん研究センター がん情報サービス -免疫療法 もっと詳しく知りたい方へ-

 

緩和医療(ケア)について

緩和医療(緩和ケア)は、がんによる症状を抑え、患者さんの生活の質(QOL:クオリティー・オブ・ライフ)を向上させる方法です。一昔前までは「緩和ケア=死」というイメージがありましたが、現在では治療と同時に緩和医療を導入することが推奨されています。そして胸痛や呼吸困難、咳、発熱などの症状は薬や酸素吸入などで対処をして、大量の胸水や腹水の貯留による症状は、ドレナージにより緩和を図るなどができます。

しかし手術や抗がん剤などの治癒を目的とする治療の効果が少なく、逆に治療を継続することで患者さんに心身に負担が発生する場合はホスピス(緩和ケア病棟)への入院や在宅緩和医療という終末期医療を行うことも患者さんの生活の質と尊厳を大切にする選択肢の一つになります。

【参考文献】

>国立がん研究センター がん情報サービス -中皮腫 治療の選択-

>ONCOLOGY オノオンコロジー

 

こころのケアについて

「中皮腫(がん)」いう言葉は、心に大きなストレスをもたらします。そして、病名を耳にした後の数日間は、「まさか私が中皮腫(がん)のはずがない」「何かの間違いに決まっている」などと、認めたくない気持ちが強くなる人がほとんどです。これは、大きな衝撃から心を守ろうとする通常の反応です。

しかし多くの患者さんは時間の経過とともに「つらいけれども何とか治療を受けていこう」、「これからするべきことを考えてみよう」など、見通しを立てて気持ちの整理が出来てきます。

しかし、ひどく落ち込んで何も手に付かないような状態が長引いたり、日常生活に支障が続くようであれば、適応障害や気分障害(うつ状態)かもしれません。心と体は一体のもので、こうしたつらい状態が長く続くと体にも大きな負担になります。できるだけ早く精神科や心療内科などを受診して適切な心のケアを受けることが大切です。

【参考文献】

>がんになったら手にとるガイド -がんと言われたあなたの心に起こること-

>国立がん研究センター がん情報サービス -がんと心-