中皮腫オンラインセミナー:療養中の不安との付き合い方講演動画・講演録

開催日:2020年7月18日

講演者:仲程千夏(沖縄県・中頭病院)

【司会】第2回中皮腫オンラインセミナーとしまして、沖縄県沖縄市にあります中頭病院より、公認心理師さんである仲程千夏さんを講師に招きまして、療養中の不安との付き合い方をテーマにして講演をしていただきます。公認心理師さんってどんな仕事をしているの?とかっていう人も多いと思うんですが、今回、この講演の中で、がん治療と心理師の役割という内容も入っていまして、そちらのほうで仲程さんのお仕事とか、そういうことが詳しくわかると思います。それでは始めたいと思いますが、その前に中皮腫サポートキャラバン隊共同代表の右田さんより、ひとことご挨拶をお願いします。

【右田】みなさん、こんにちは。中皮腫サポートキャラバン隊の共同代表の右田と申します。今日は沖縄の中頭病院からオンラインを通じて仲程さんに来ていただきました。公認心理師ということ自体も、皆さん初耳の方も多いと思うんですけども、私たちがどう病気と向き合えばいいのかということを、話を聞きながら考えていきたいと思っていますので、今日はよろしくお願いしておきます。

【仲程】皆さま、はじめまして。ただいまご紹介にあずかりました公認心理師の仲程と申します。本日はお忙しいところ、このようなお時間を作っていただきましてありがとうございます。今回、オンラインという形でお話させていただくのは初めてですので進行に不慣れなところもあるかもしれませんが、ご質問やご感想などがありましたら、また後ほどお時間を作って、皆さまの声を聞かせていただけたらと思います。

【仲程】本日のお話ですが、まず前半に、がん治療と心理師の役割について、実際の、私の業務などもあわせてお話をさせていただきます。そして後半に、療養中の心のケアについてご紹介をさせていただきます。

まずはじめに、そもそも心理師という仕事に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。私は患者さんにお会いする際にですね、まず挨拶として、自己紹介を行いますが、心理師の○○です、というふうにお伝えすると、患者さんの方からは「心理師って何をする人ですか」と質問されることが多くあります。また他にも、「心理師に心を読まれるのが怖いです」というふうに警戒されることもありますし、また、「私に何か心の問題がありますか」というふうに驚かれる方もいらっしゃいます。また、「弱音を吐いたら病気が悪くなるので、今は何も話したくありません」というふうに話をすることさえも断られるということもありました。心療内科や学校などでは、カウンセラーという名称で、もう少し馴染みがあるかもしれませんが、一般の総合病院においては、まだまだちょっと聞き慣れない業種に入るのかもしれません。

では、公認心理師とは何者か、というところですが、私たち公認心理師は、心に悩みを抱えている人や、またその家族に対して心理学という専門的な知識をもって相談に応じたり、サポートをする役割を担っています。公認心理師は心理職初の国家資格として2018年に誕生しまして、そして現在は、こちらですね。医療・保健、複視。教育現場、また司法や矯正、また産業などの分野で活躍しています。これら5つの分野の中で、本日は私が活動しています、医療・保健領域における公認心理師の役割についてご紹介したいと思います。

はじめに、まず私の職場を簡単にご紹介させていただきます。私は現在、沖縄県本島の中部圏内にあります、中頭病院というところで勤務をしています。病院に関してですが、診療科目が31診療科で、急性期の総合病院になります。ベッド数が355床。診療実日数による一日の平均は、外来であれば643名、また入院ですと360名となっています。また、入院患者さんの平均在院日数ですが、10.3日ですので、入退院の回転が非常に早い印象があります。ただ、その分、患者さんとの出会いも多くあるなというふうに感じています。現在、中頭病院には公認心理師が2人在籍しておりまして、日々の業務につとめております。

そして病院には、当然なんですが、心理師以外にも多くの職員が在籍しています。例えば医師をはじめ、看護師さん、また、事務の職員さんであったり、管理栄養士さん、そして医療ソーシャルワーカーさん。また理学療法士さんや作業療法士さん、言語聴覚士さんといったリハビリ部門、また、薬剤師さんなどもいらっしゃいます。他にも多くの職種が在籍しておりますが、病院ではこれら個々の職員がひとつのチームとなって患者さんの治療に関わります。患者さんお一人お一人の、ニーズに応じて活躍する職種というのも少し異なってうるかもしれませんが、私たち心理師もこのチームの一人として治療の開始の前から、治療終了後の定期健診まで経過を見守っていきます。

そして医療現場における心理師の主な役割についてですが、大きくわけて3つあります。まず1つめは療養における様々な意思決定支援です。心理師は面談を通して、患者さんおひとりおひとりの生活環境や、また価値観であったり、また背景、その役割などを丁寧に傾聴し、患者さんご自身が納得のいく治療選択、または意思決定ができるようにお手伝いをさせていただきます。治療においては、やはり重大な選択を迫られる場面も多くあるかと思いますので、少しでも安心して治療が受けられるように何度も何度も話し合いを重ねてサポートをしていきます。そして続いて2つめの役割なんですが、療養中の患者さん、およびご家族の心のケアになります。治療による不安や辛さを抱えている患者さんの話を傾聴し、苦悩が軽減できるように支援をしていきます。また、日常で困り感が強く出ている患者さんに対しては、専門的な助言を行いまして、精神不調の予防に努めるように積極的に働きかけていきます。

そして最後は、院内での多職種連携になります。先ほど病院ではチームで動いているというふうにお話しましたが、チーム内で患者さんに関する情報共有を密に行いまして、患者さんがより安心して過ごせる療養環境を検討していきます。また、心理師が患者さんから受け取った声を、主治医や多職種の方へ伝達し、必要な支援につなげるなど、時にはコミュニケーションの架け橋になることもあります。ここでの多職種連携は、患者さんが安全に治療を進める上でも、非常に大切な時間だと感じます。

では、私の実際の当院での主な業務内容になりますが、まず、1つ目は患者、ご家族さんの心理面談になります。ここでは小児からご高齢の方まで、年齢、疾患問わず、横断的に相談依頼に対応しています。ですので先ほど紹介した、31診療科から依頼があれば、その都度、面談を設定して、患者さんとお会いするということになります。そして2つ目は病棟カンファレンスへの参加です。カンファレンスには多くの職種が参加されますので、患者さんに関する情報共有などはここで行います。また精神科チームのカンファランスなどにも参加し、精神科医と病棟回診なども行います。そしてこちら、5つ目に記載されている、がん相談支援室の運営に関してですが、こちらは一般的な心理師業務とは少し異なりますので、ちょっと他の病院さんと比べると、特殊な業務かもしれません。ただ、このように、心理師は直接的、または間接的に患者さんの治療をサポートしています。本日はこの業務の中から、1番の患者、ご家族さんとの心理面談の流れと、5番の、がん相談支援室の運営という業務について詳しく紹介していきたいと思います。

ではまず、患者、ご家族さんとの心理面談についてですが、対象は当院に通院している患者さんが中心になります。流れとしましては、患者さんの同意が得られた場合に、医師のほうから心理師に介入の依頼が入ります。その後、患者さんと日程を調整して、私たちは面談を行っていきます。そして外来患者さんであれば、医師の診察後に面談を行うことが多いのですが、だいたい回数としては1回から2回の面談で終了することが多いです。入院患者さんに関してはですね、患者さんの空き時間に心理師のほうから病室に出向いてお話を伺います。こちらも回数としては、入院日数にもよりますが、だいたい1度で終了することもあれば、複数回、面談を行っていくこともあります。

そして実際の面談のなかで多く聞かれた相談内容をちょっと簡潔にまとめてみました。ひとつずつ読み上げていきますが、やはり一番多いのが、がんと診断されて、頭が混乱している、ですとか、あと、これからどうなるのか考えると、辛くて眠れない。また、治療選択で迷っている。私はどうしたら良いんでしょうか、というふうにお話された方もいました。そしてあと、子どもに何て説明したら良いか、答えが見つかりません。また、通院のたびに気持ちが塞ぎ込んでしまい、治療を受ける自信がありません、という方もいらっしゃいました。そして最後に、不安で何もできない、心のケアのやり方を教えてください、というような相談もありました。このように、相談内容は多岐にわたります。今回は診断されて間もない時期の相談内容をまとめましたので、内容に偏りがあるかもしれませんが、ただ、経過に応じてですね、本当に多くの苦悩を抱えながら、皆さん治療に取り組まれているなというふうに印象を受けます。

こういった患者さんからの相談に対して、私たち心理師がどのような関わりを持てているのか、というところで、これまでの対応の一例についても少しあげてみました。患者さんの困り具合に応じてですね、支援内容というのも変わってきますけれども、ただ多くの方がやはり気持ちの辛さをお話してくださいます。ですので、それに対して心理師は、まず治療中に起こりえる心の変化や、またその経過の見通し、そのセルフケアの重要性についてお話し、現状に対する理解を患者さんと共有します。また、本人らしさを取り戻す工夫も共に考えて、日常で実際に取り組めるように支援することもあります。そして患者さんから傾聴した情報を主治医や担当医と共有して、心の状態の経過観察を依頼することもあります。そして心理師だけではなく、やはり多面的にサポートできるように、経過にあわせて他職種で連携していけるように努めていきます。今回の例は、断片的なお話になりますので、対応として少し物足りなさを感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、イメージとして、ああ、なるほど、心理師ってこういうことをしているんだな、という程度で頭の隅に残していただけたら嬉しいです。

そして今回、心理師について紹介させていただけるということで、心理師の強みについて少し考えてみました。どの職種にも強みというものがあると思うんですが、まずはやはり病院という空間で、十分な時間をとってお話を聞くことができるという点は心理師の大きな強みかなというふうに感じます。また、患者さんおひとりおひとりの療養体験にそった関わりが継続できるという点もひとつのアピールポイントになるのではないかと思います。

そして実際に、皆さんが心理師とお話してみたいと感じたときの、接点の持ち方なんですが、まずはご自身が通院されている病院に心理師がいるかどうかというのを確認されてみてください。直接医療者に質問するのもよいと思いますし、または病院のホームページなどで確認するのもよいと思います。病院の体制によっては、精神腫瘍科科や、また緩和ケアチームなども活動しておりますので、あわせて確認されてみるとよいかもしれません。そしてもし情報が不確かな場合は、各県に設置されている、がん診療連携拠点病院の相談支援センターに問い合わせてみるのもひとつだと思います。相談支援センターに心理師の配置があれば、そこでそのまま相談をすることも良いと思いますし、近隣の支援施設や、心理師がいる心療内科を紹介してもらうというのもひとつだと思います。まずは「こんなことで」と遠慮せずに、積極的に情報収集をされてみてください。

 ただ、一方で、個人的には心理師との面談にこだわりすぎる必要も無いかなというふうに思います。日頃からお世話になっている医療者や、信頼できる人など、自分が支援してもらいたい人に助けを依頼するということがまずはひとつ大事なことですので、ぜひ、今の医療者とのつながりも大切にされてください。

 まずはご自身が心地よく話せる方と積極的にコミュニケーションをはかり、そしてその経過の中で心理師との出会いにつながれたらいいなというふうに思います。

そして最後に、心理師と面談したときに発生する面談の料金についてなんですが、当院では主治医の診療の補助的な役割として面談を行いますので、基本的には無料で相談に応じております。ただ、キャラバン隊さんの調べによりますと、病院の体制によっては、保険診療で面談を行っているところもあるようですね。ですので、料金に関しては正確にお伝えすることができないのですが、もし利用を希望される場合は、この場合もご自身が通院されている病院に一度確認をされてみてください。ちなみに国立がん研究センターの中央病院さんと、大阪国際がんセンターさんのほうは、必要に応じて心理師と面談を行っていて、こちらは保険診療で対応しているということでした。一方で順天堂大学医学部付属順天堂医院さんと、鳥取県の鳥取県立中央病院さんのほうは、がん相談支援センターに臨床心理師を配置されていて、こちらでは無料で相談に応じているということでした。個人的には、がん相談支援センターでの心理師設置というのは、患者さんからのアクセスが最短ですし、非常にわかりやすくていいな、というふうに思います。こちらのほうはご参考にされてみてください。以上が心理師面談に関する業務の紹介になります。

では続きまして、相談支援室の運営業務についてもご紹介をさせていただきます。心理師も開設当初から事務局として携わっていて、今年で開設3年目になります。当院はがん診療連携拠点病院ではありませんので、拠点病院に設置されている、がん相談支援センターとは少し病院機能が異なりますけれども、ただ、ここからキャラバン隊さんと繋がるきっかけにもなりましたので、当院の運営状況などもあわせて共有をさせていただけたらと思います。

当院のがん相談支援室の役割としましては、2つあります。ひとつはがん治療に関する相談窓口です。支援室では、職員の常駐はないのですが、希望に応じて心理師や看護師さんが患者さんからの相談を受けております。ここでは必要な情報を提供したり、また、資料の紹介などが中心になります。そしてその場で解決できないケースに関しては、窓口担当者のほうから適切な専門職に引き継いで面談の調整なども行っております。最近はコロナの問題で、利用者数が大きく減ってはいるんですが、ただ年々、患者さんからの認知度が高まってきていると実感しています。そして2つめが、がんサロンの運営支援になります。当院では週に1回の2時間、患者さん同士の集いの場や、または医療スタッフとの交流の場を提供しております。また、サロン以外にも、イベントなどを企画していて、患者さんに情報を発信したり、また一緒にものづくりなども行っています。心理師は安心、安全な空間を作る世話人として、毎週サロンに参加させていただいて、お手伝いをしています。

こちらが、がん相談支援室の中の様子になります。左の写真が実際に相談をうけたり、サロンを開催する空間となっています。普段は誰でも入室して使用できるように、部屋のほうは開放しております。そして右の写真になりますが、がん治療に関する資料は、こちらのほうと、もうひとつ反対側に設置しているんですが、ここで資料のほうは提供しております。

中皮腫に関する資料なども、こちら、ちょっと見えにくいんですけれども、上のほうに並べて患者さんに提供をしています。また、がん治療の資料だけではなく、一般図書なども置いて、自由に読んでいただいています。平日ですと、診療の合間であったり、また診療後、そして入院の患者さんであれば、入院中に支援室に来て利用しているという様子も見受けられます。そしてこの真ん中に電話が置いてあるんですけれども、相談を希望される際は、こちらの電話から呼出しをしていただいています。そして電話を受けた担当者が、電話にて直接相談に応じたり、または支援室に足を運んで直接対話でお話を聞いています。

部屋の中には「つぶやきノート」というものを置いています。設置当初は、がん相談支援室の環境に対する要望、例えば「もう少し入りやすくしてほしい」とか、「和みやすい空間にしてほしい」とか、そういう環境に対する要望が多く記載されていたんですが、最近は患者さんの療養中の思いであったり考え方であったり、また共有したいことなどの記載も増えてきました。こういった患者さんの書き込みには医療者のほうでその都度お返事を書いて、今では公開式の、交換ノートのような機能になっています。現在は「ご意見ノート」と「つぶやきノート」で2冊目に突入しています。そして右の写真が、こちらがタオル帽子になります。皆さん、タオル帽子ってご存じでしょうか。簡単に説明しますと、タオル帽子というのは、治療による脱毛で悩まれている方に使用してもらえるように作成したもので、タオル生地で作成した帽子になります。当院では、ボランティアさんや医療スタッフ、また患者さんなどと定期的にタオル帽子を作成して、このように無料で配布をしています。このタオル帽子が非常に好評でして、毎年、年間100枚以上提供しています。そして「つぶやきノート」にも、タオル帽子への感想や感謝の気持ちなどが多く綴られています。では、がん相談支援室の活動内容はこれで以上になりますが、今後は他の病院さんの取り組みなども参考にしながら環境を整えていけたらと思っています。では以上が前半のお話になります。

ここからは少しテーマが変わりまして、療養中の心のケアについて、少しお話をしていきたいと思います。

最近は仕事をしながら治療を受ける方が増えてきていて、病院でも両立支援という言葉を耳にする機会が多くなりました。これはがんの治療に問わず、どの疾患に対しても言えることだと思います。

 そして治療を遂行する上で重要になってくるのが、やはり生活の質をどう保つか、という点だと思います。最近は生活への満足度を保つために、身体面だけではなく、身体の治療と並行したこころのケアの重要性についても注目が高まってきました。生活の質への捉え方というのは、人それぞれ異なるとは思いますが、身体と心の両方をいたわることが、結果として生活の質の向上にもつながるというふうに言われています。

では続いてですね、ここで少し人の心の働きについてお話をしていきたいと思います。一般的に私たち人間は、自身を取り巻く環境の変化や、またネガティブな出来事を体験すると、心と身体に様々な反応が起こります。仮に告知などのバッドニュースを聞いたとします。すると私たちは、「この先どうなるんだろう」と不安になって、睡眠の乱れが出てきたり、また、「もう、どうしようもない」と気持ちが落ち込んで食事がとれなくなったりするかもしれません。その出来事が想定外であればあるほど、ストレス反応というものも大きくなってきます。ただ、このような心身の反応は、衝撃的な出来事から自分を守るための防衛反応として起こるものであり、緊急事態における正常な反応とも言われています。ですので、イベント直後に心の不調が出たからといって、すぐに異常事態と判断することはありません。

ただ、やはりこのネガティブな出来事のあとは、多くの方が過度のストレスを体験し、心と身体に大きな負荷がかかる状態ではありますので、少し用心して慎重に経過を見ていく必要があります。このようにネガティブな出来事の後には、私たちには辛い体験をしますが、ただ、一方で、人には自然に回復する力というものも備わっています。一般的にはショックな出来事の後、数日から約2週間程度で、その困難に適応しようとする力が働くと言われています。例えばこのイラストのようにですね、バッドニュースを聞いた後に、心は様々な反応を見せて、一時的に普段の日常生活とは異なる状態に陥ります。ただ、多くの場合、日が経つことに、少しずつ少しずつ回復していき、約2週間程度で日常生活に支障が無いところまで回復するというふうに言われています。これが自然に適応していく心の動きになります。しかし、中には十分回復できないまま経過してしまって、苦悩が大きくなる方もいらっしゃいます。このグラフで言いますと、うつ病であったり、適応障害というところになりますが、この場合は早めに気持ちの辛さについて、主治医や専門の方に相談することをおすすめしています。これは患者ご本人だけではなく、ご家族に対しても同じことが言えますので、もしご家族の様子を観察するなかで、何か、いつもと違う状態が続いたら早めにご相談されてみてください。

日常生活のなかで不安が問題となるときの一例をお話します。一日中不安にとりつかれていると感じて、活動ができないですとか、または思考の転換が困難で、他のことにまったく集中できない。日々の細やかなことも不安に感じて圧倒されてしまう。過度に自分を責めて批判をしてしまう。または自分自身を傷つけるような行動をしてしまう。また、生きるために必要な食事や睡眠が十分にとれない。こういったことがあげられます。こういった状態が続くと、治療以上に心が苦しくなってきてしまいますので、こういう状況にならないためにも、日頃から不安や葛藤が深刻にならないように、自分自身で予防していくということが重要になります。

では続いて、予防という観点から、一般的に言われている、自分でできる心のケアについて少し紹介をします。基本的なことではありますが、ちょっと改めて一緒に確認をしていきましょう。まず、1つ目は、自分の心の状態を観察することが必要なケアにつながります。例えば今、どんなことが不安なのか。どんなきっかけだったのか。不安の強さを表すとすると、0から10までどのぐらいになりそうか。またその不安に対してどう感じているか。またどう考えていて、どんな行動をしたのか。こういったことを自分自身に問いかけてみて、紙に書き出したりですとか、また、頭の中で整理してみると良いと思います。そうすることで不安を客観視することができて、解決策のひらめきも出てくるかもしれません。また、闘病日記などを書いてみるのも一つと思います。そして2つ目は、当然ですけれども、不安に気づいたら解消するために行動してみましょう。適度な運動やリラクゼーションであったり、また、信頼できる相手に相談したり、また、何もせずに、もうありのまま一日を過ごしてみたり、自然に触れてみたり。また家族や子どもとの時間を多く保つ。そして生活のペースをいつも以上に緩やかにする、なども良いと思います。今、自分自身でできることでかまいませんので、気分転換を見つけて、積極的に取り組んでみましょう。そして最後、3つ目は、自分に必要な情報を取り入れてみましょう。活用できる資源や、地域のサービスなど、自分の助けになる情報は前向きに取り入れていけるとよいと思います。これはコロナの問題でストレスを抱えやすい今にも、通用して言えることだと思います。もうすでにこの3つとも、やっていますよ、という方がいましたら、大変素晴らしいと思いますので、その場合はぜひ、今の取り組みを継続して、生活の質を高める工夫を続けてみてください。

そして、最後に、こころのケアをする上で、ちょっとしたポイントをご紹介します。まずは自分が長年続けてきた対処法は一番の武器になりますので、これまでの人生を振り返ってみて、自分の力になった武器をまずは最大限発揮してみましょう。そしてうまくいったこと、自分に合っていると感じたことは、積極的に続けていきましょう。一方で、効果が期待できないこと、もしくは回復が実感できないことに関しては快く手放してみましょう。自分が心地良いと思えることを自信を持って続けていきましょう。また、時には周りの方に、どんなセルフケア、自分自身の心のケアを行っているのかというのを聞いてみるのも良いと思います。対処法が多ければ多いほど、自分の力になってくれます。そして悩んだときは周りに助けを求めましょう。SOSを出すことも、よりよく過ごすためのコツになりますので、一人で努力するときと、人に頼るときの見極めというものを少し意識してみると良いと思います。これらのポイントをおさえておくことで、いろいろなケアの工夫ができると思います。まずは気づいたときに意識的に行ってみましょう。正解や間違いはありませんので、少しずつ心地良い体験というものを積み重ねていけると良いと思います。

では最後に、心のケアのひとつであります、リラクセーションを皆さんと一緒に行ってから、本日の講話は終わりにしたいと思います。今回は呼吸法だけの紹介になりますが、リラクセーションとネットで検索すると、いろいろな方法が出てきますので、他にも挑戦してみたいという方がいましたら、そちらのほうもぜひ参考にされてみてください。では早速、始めていきたいと思います。今回紹介するのは腹式呼吸になります。今回は、椅子に座った状態で行っていきますが、もし今、床に座っている方がおられましたら、すこしあぐらをかいてですね、楽な姿勢でやっていただけたらと思います。では、ちょっとまず、ひととおりやり方の説明をします。まずイラストのように、お腹に両手を軽く重ねてみます。その状態で、一度、息を吐ききり、そして口を閉じた状態で、ゆっくりとお腹をふくらませながら3秒かけて鼻から息を吸います。そして1秒、息を止めて、それから6秒かけてゆっくり息を吐いていきます。イメージとしましては、吸う、吸う、吸う、止める、吐く、吐く、吐く、吐く、吐く、吐く、という感じですかね。はい、では、それでは皆さんも一緒にやってみましょう。私のほうから皆さんの反応が見えないのがちょっと残念なんですけれども、私がちょっとカウントをしながらですね、まずは2、3回、ちょっとやっていきたいと思います。もし呼吸苦のある方は無理する必要はありませんので、自分の体調を優先されてください。はい、ではまずやってみたいと思います。まずは両手をお腹に重ねてみます。そして息を吐ききって、口を閉じたまま、ゆっくりとお腹をふくらませながら、3秒かけて息を吸います。はい、そしたら息を止めて、次は6秒かけてゆっくり息を吐いていきます。はい、吐ききったら、また3秒かけて鼻から息をゆっくり吸います。はい、では止めて、6秒吐いていきます。2、3、4、5、6。はい、呼吸法のポイントとしましては、吸い込む際に身体に安心と安全を馴染ませるように大きく吸い込んで、吐き出す際に不快な感覚をすべて外に吐き出すようなイメージで行ってください。はい、では、今度は私はカウントしませんので、それぞれのペースで、2回から3回ほど、腹式呼吸を行ってみましょう。はい、では、始めてみてください。はい、ではここまでにします。戻ってきてくださいね。大事なのは、お腹に意識を向けて、呼吸をすることですので、呼吸のカウントは多少前後してもらってもかまいません。自分の心地良い程度で調整していただけたらと思います。寝る前やイライラしたときなどにですね、静かな場所にいって、数分間、呼吸を整えてみるというのも良いと思います。はい、では以上が誰にでもできる呼吸法のリラクセーションになります。リラクセーションを行った後は、身体がリラックスした状態になっていますので、このまま眠りについてもらってもかまいません。ただ、まだまだ日中で、この後、活動される方も多いと思いますので、活動するための解除動作というものもあわせて行っていきたいと思います。

解除動作を説明したいんですが、これ、カメラで見えますか?ちょっと一緒にまねしてやっていただけたらと思うんですが、まず両手を上に向けて、この手をグーパーグーパー、開いたり閉じたりを繰り返します。そしたら今度は、両手の曲げ伸ばしを行います。いいですかね、皆さん、できてますかね。はい。では、これを1分ほど行ったら、今度は首を左右に1回ずつまわします。はい、ではこれが解除動作になります。これでリラックスした状態から活動できる状態になっているかと思いますので、日常で呼吸法を行う際にも必要に応じて呼吸法のリラックスと、解除動作というものを行っていただけたらと思います。はい、では、皆さま、いかがだったでしょうか。

本日は心理師の役割を中心にお話をさせていただきましたが、ただ、病院には本当に多くの専門職の方がいらっしゃいます。ですので、療養のことで困ったことがありましたら、ぜひ必要な資源をご活用ください。また、今年はコロナの影響で、ちょっと落ち着かない日々が続いておりますが、ぜひ中皮腫のサポートキャラバン隊さんの絆であったり、こういうつながりというものを大切にしながら、一日一日を穏やかにすごしていただけたらと思います。それでは本日はこれで終了にしたいと思います。ご静聴ありがとうございました。

【司会】仲程さん、どうもありがとうございました。大変興味深いお話で、公認心理師さんについても詳しく説明していただきまして、心のセルフケア等、非常にためになるお話をどうもありがとうございました。引き続きキャラバン隊との交流を通しまして、中皮腫の患者さんの療養の力になれるように、よろしくお願いいたします。それではですね、質疑応答の時間にしたいと思います。既にチャットのほうで質問が入っているんですが、これを視聴されている皆さんですね、ご質問ありましたらチャットもしくは画面の下のほうにですね、「Q&A」っていうマークがありますので、そこをクリックしていただけると質問ができるようになっていますので、どしどし質問のほう、お寄せ下さい。

質問1。「仲程さんはご自身にストレス反応があった際は、どのような対処をされているのでしょうか」

【仲程】はい、ご質問ありがとうございます。私もですね、患者さんから同じような質問を受けることがあるんですけれども、私はやっぱり仕事をしていたりとか、今日のようなちょっと講演などがありますと、やっぱり緊張してしまって、不安というものも高まりますので、そういったときはですね、やはり普段、自分の趣味であったりとか、そういう楽しい時間というものを積極的に多く持つようにしています。で、私はやっぱり結構友達とかですね、食事に出かけて、普段の近況報告であったりとか、そういう悩みを相談したりとかですね。あと、やっぱり沖縄は自然が多くて、海が近いですので、結構ドライブに出かけて、海など自然に触れることが多いかなというふうに思います。

【司会】はい、ありがとうございます。その次の質問ですね。「心理師さんのいない病院は、誰に相談すればいいのでしょうか」という質問です。

【仲程】これもですね、確かに今、心理師がなかなか常駐していない病院というのもあるかと思うんですが、まずはやはり主治医の先生にですね、今ちょっと心の辛さがあるので、一度ちょっと相談してみたいということを率直に主治医にお伝えして、主治医の先生から必要な情報をちょっと提供していただくというのもひとつ方法としてはあるのかなというふうに思います。それ以外にもですね、主治医の先生に聞けないにしても、お近くの看護師さんであったりとか、あと、そうですね、でも看護師さんに聞いてみて、そこで情報をもらうというのもひとつ重要な情報にはなるかなというふうに思います。

【司会】次の質問です。「呼吸法は何分ぐらい、何日ぐらい続けるのが良いのでしょうか。また呼吸法を繰り返せば、心の問題はすべて解決されるのでしょうか」ということですが。

【仲程】面白い質問ですね。呼吸法はですね、そんなに時間というのはきっちり決まってはいないので、自分でできる範囲でですね、だいたい1分以上繰り返し続けていただけたらなというふうに思います。これも何日続けたらよいかということですが、これもできるだけ毎日取り組んでいただいて、もし毎日難しくても、できるときにですね、繰り返し継続していただけたらと思います。そして、呼吸法を繰り返せば心の問題がすべて解決されるかというと、それはちょっと難しい問題にはなるのかなと思うんですけれども、ただ、やっぱり呼吸法を行うことで、自分自身にリラックス効果というのをもたらすことができますので、そういうちょっと疲れたときとか、ちょっと身体がしんどいなと思うときは、そういう呼吸法を取り入れてみて、不安を少しでも軽減する、ひとつの方法として取り入れていただけたらいいのかなというふうに思います。

【司会】ありがとうございます。他の方ですね、視聴されている方で、仲程さんにですね、ご質問のある方はチャットでもQ&Aでもいいので、質問のほうを入力していただければと思います。

【参加者】心のいろんな不安とか、悩みを抱えているご自身がですね、非常にその問題というか、外の専門職の方とか、あるいは周りのご家族から見て、ちょっと明らかに、ちょっといつもと様子等が違うというような場合もあるかと思うんです。ただ、そのようなときに、ご本人が、いや自分にはそんな悩みとかは無い、大丈夫だと、まったく変わらないというようなことで、周りのご家族等は非常に心配をされているけれども、なかなかその対処を本人が、やはり何か心に、冒頭にお話がありましたけれど、心に何か問題があるんですかという話に、非常に強い拒否反応を示される方も珍しくはないと思うんです。ご家族がそういったことを感じていながら、なかなかその、コミュニケーションがとれない場合は、どのような形で、コミュニケーションをはかっていったらいいのかという。何か今までの経験上でありましたら、ちょっとご助言をお願いしたいんですけれど。

【仲程】私もこれまで対応した患者さんの中に、やっぱり本人は、今おっしゃったように、特に心の問題もないし、話もしたくありませんというふうに強く拒否をされた患者さんがいらっしゃったんですけれども、このケースは周りのご家族が心配して心理師に繋がったというケースだったんですが、この場合はやはり本人が拒否している以上、私たちは無理に面談を行うということができませんので、その経過を観察、様子を見ながらですね、どちらかというと本人よりも、こういった場合ってご家族さんの困り具合のほうが大きいと思うので、ご家族さんに対して、私たち心理師が面談を行って、家族さんにですね、どんなふうに関わってみてくださいとか、こいうふうな反応があったら、こんなふうにちょっと声をかけてみて下さいとか、そういうふうに家族に対して助言を行って、家族のほうから本人に日常でできるような、関わりというものを継続してもらうように働きかけています。なのでこの場合はですね、私たちが患者さんに直接支援をするというよりは、ご家族さんを通して間接的に支援をしていくということになるのかなと思います。

【司会】「精神科を受診するのと心理師さんへの相談とはどう違うのですか。メリット、デメリットありますか」という質問が入っています。精神科の受診と心理師さんへの相談との違いというところからちょっと教えていただけますか。

【仲程】まずはやはり精神科に受診して、精神科医とお話をするということに対して、結構敷居の高い方がいらっしゃると思いますので、そのひとつ手前の段階として心理師とお話をするというのもひとつあるのかなというふうに思います。心理師は基本的にはお薬の処方などは行っていませんので、薬の処方を希望されない方に関してはですね、心理師の面談を行うというのもひとつだと思います。ただ、やはりお薬をご希望される方というのは、やはり精神科医の診察が必要になってきますので、そのときは精神科との面談であったりとか、診察というものを検討していただけたらいいのではないかと思います。

【司会】もうひとつ質問があるんですが、「お姉さんが患者です。私は一緒に住んでおらず、姉と同居している義理のお兄さんが疲れているように感じて心配しているのですが、どのように気をつけたらいいでしょうか」ということなんですが。

【仲程】義理のお兄さんの体調面が気になるということですかね。この場合もですね、やっぱりたぶん義理のお兄さんも、普段お仕事などもされているのかなとちょっと想像しますので、やはりこういった仕事が今まで通りできているかなとか、食事をしっかり変わりなく食べられているかなとか、睡眠、しっかり休めている時間が取れているかなとか、そういうことを少し見守りながら確認されてみるといいのかなというふうに思います。

【司会】その他にご質問のある方、おられますでしょうか。「臨床心理師さんと、公認心理師さんの違いはなんでしょうか」ということですね。

【仲程】臨床心理師は、簡単に説明しますと、臨床心理師は民間の資格になります。一方、公認心理師のほうは国家資格になりますので、そのあたりで大きく違うかなというふうに思います。ただ、業務内容自体はそれほど大きな差はありませんので、資格の、国家資格かそうでないかというところの違いかなというふうに思います。

【司会】ありがとうございました。このへんで今日の講演のほうを終了したいと思うんですが、右田代表、最後にひとことお願いします。

【右田】仲程さん、今日はありがとうございました。本当にためになるようなことをいろいろ聞かせていただきまして、私もいろいろためになりましたんで。たぶん今日来られた方もですね、実際、聞いてみて、今後どうやっていくかというのを考えていただけるかなと思っています。今日は皆さんも忙しいところ、参加していただいてありがとうございました。また機会があればこういうのを持ちたいと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。