中皮腫・アスベスト疾患の労災・救済認定のための石綿ばく露(原因)調査の3つのポイント

公開日:2020年5月7日

中皮腫石綿肺がんをはじめとする労災認定や救済認定に関して、多くの場合には石綿ばく露の確認が求められます。認定の実態から検討すると、まだまだ多くの被災者が原因がわからずに両制度への検討を断念している事例や、救済制度の認定はされながらも労災制度への請求を断念している事例があると推察されます。石綿ばく露に関しての基本的な認識を整理し、着実に労災制度や救済制度への認定につなげましょう。

石綿ばく露とは

そもそも、「曝露(ばく露)」の意味の一つには次のあげられます。

放射線、アスベスト、有害化学物質などの危険に身体がさらされること。

出典:コトバンク「暴露・曝露」

石綿ばく露形態

アスベスト(石綿)については、いくつかの形態に整理することができます。主には以下の4つに大別できます。

職業性ばく露

仕事でアスベストないしはアスベスト製品を直接扱っていた場合(石綿原料の運搬、工場内での取り扱い、建設石綿含有建材の裁断・加工等)や、それらを自身が直接扱っていたわけではないものの同じ工場や作業場内でアスベストないしはアスベスト製品を直接扱っていたことで、それらが同一環境内に飛散してばく露した場合などを指します。前者を「直接ばく露」、後者を「間接ばく露」と分けることもできます。間接ばく露については、比較的広範囲に検討する必要があり、代表的には造船所があげられます。事務職などでも多数の被害が出ていることから、間接ばく露の可能性については精査する必要があります。

家庭内ばく露

アスベストないしはアスベスト製品を扱う工場や建設現場等で働いている者が、自宅に作業着や防護マスクを持ち帰り、家族が洗濯などでそれらを取り扱った際にばく露するものなどを指します。間接ばく露と位置付けることもできます。

建物ばく露

アスベストを天井の吹き付け材などに使用していた場合に、その環境下で居住するなど、一般の住宅内での生活をする中で石綿にばく露してしまうことを指します。または、職業性ばく露と重なる部分もありますが職場等で石綿吹き付け石綿などが剥き出しになっているような環境下で一般事務等の仕事をしている中でばく露してしまうような場合も含まれます。実際に、文具店の店長が備品を収納する倉庫への出入りで中皮腫に罹患した事例などがあります。

環境ばく露

居住や通勤・通学先の周辺(最大で3キロ程度)にアスベスト工場などがあり、工場から空気中に排出されたアスベストが風に流されるなどして周辺環境に広がり、ばく露してしまう場合を指します。代表的には、兵庫県・尼崎市にあったクボタ・旧神崎工場の周辺や奈良県・王子や静岡・袋井など各地工場の周辺などの被害があげられます。

震災ばく露

職業性ばく露や環境ばく露と重なる部分もありますが、大規模な地震等の震災が発生した際に、アスベストを含む建物などが広範囲で崩壊するなどし、それらのがれきの撤去作業やがれきから飛散するアスベストを吸い込んでしまうことを指します。

中皮腫・アスベスト疾患の労災・救済認定のための石綿ばく露把握の3つのポイント

各制度の請求(申請)にあたっては、基本的に石綿ばく露の確認が必要となります。以下の、3つのポイントを意識して石綿ばく露を確認してみてください。

医学資料の検討

「医学的資料」と石綿ばく露の調査とは一見、異なるように感じるかもしれませんが、医学的な資料から石綿ばく露を示唆することができます。国際的なアスベスト疾患の診断基準を示しているヘルシンキ・クライテリアでは次のように述べています。

・中皮腫の大多数は石綿ばく露によるものである。
・胸膜プラークは、石綿繊維へのばく露の指標である。
・石綿肺の存在は高濃度ばく露の指標のひとつである。
・両側性びまん性胸膜肥厚は、石綿肺の例にみられる、中等度または高度のばく露と関連していることが多く、したがって起因性に関して石綿肺に近いとみなされる。

出典:井内康輝ほか翻訳監修「石綿、石綿肺、及びがん、診断及び原因判定に関するヘルシンキクライテリア2014年版:勧告(監修者最終統合版)」『産業医学ジャーナル』第39号第5号

このように、何らかの疾病や病変そのものの診断で石綿ばく露を推測することができます。原因がよくわからないという方でも、これらの所見があればどこかでアスベストを吸っています。後述する「労働年数の確認」や「具体的作業内容の確認」をしてみましょう。

労働年数の確認

どこの会社で、どのくらいの期間働いていたのかの確認です。日本年金機構が発行する「被保険者記録照会回答票」を最寄りの年金事務所で取得することや、被保険者総合照会(得喪単位)を取得することで何十年も前にさかのぼって働いて会社の在籍期間などの多くが確認できます。ただし、建設業などに従事した方の中には、日雇いで雇用主が曖昧であったり、記憶がないなども珍しくありません。そのような場合は、どのような現場(〇〇ビルの工事や〇〇ドームの工事など)で何歳くらいの時に働いたのか、当時の親方はどこに住んでいたかなどを少しずつでも思い出してメモをしてみてください。私たちが相談をお受けする際にもありますが、第三者との対話の中で記憶が蘇ってくることも珍しくありません。

具体的作業内容の確認

どこの会社・現場でどの程度の期間働いたのかを整理した上で、そこではどのような作業をしたのかを確認しましょう。ここでは、「アスベストを吸った作業は」など先入観を持たずに、一つひとつの仕事の工程を振り返ることが重要です。そのような整理をし、それでもご自身に石綿ばく露がないと感じても、私たちは相談を受ける中で経験に基づいた視点から石綿ばく露を指摘させて頂くことがあります。

中皮腫・アスベスト疾患の労災・救済認定の実例

これまでに多くの請求(申請)をサポートしてきましたが、先入観を持って特定の業種に限定して石綿ばく露を疑うことはできません。最も被害が多発しているのは建設業ですが、例えば、医師の中皮腫事例、看護師の方のタルク(アスベストが含有していた時期があった)の使用、自動車整備工場の事務職の中皮腫被害、国会(衆議院)職員の中皮腫、学校教員の中皮腫、工場周辺住民の肺がん・石綿肺などあげれば切りがありません。アスベストが3000にも及ぶ製品に使用されてきましたので、あらゆる可能性を検討する必要があります。