わずか1年の石綿ばく露 バス会社勤務の元自動車整備工(補助員)が腹膜中皮腫を発症 遺族が国を提訴 北海道・札幌地裁

2019年10月8日、元自動車整備工(補助員)が腹膜中皮腫を発症して亡くなった男性の遺族が札幌地裁に国に損害の賠償を求めるために提訴しました。自動車整備工の事例では2018年12月18日に大阪地裁での和解事例があります。

今回の提訴に関わる被害者の男性は、北海道内のバス会社に勤務していましたが、昭和39年4月から昭和40年3月末頃までの間、営業所に併設されていた大型バス修理工場で大型バスの整備作業補助に従事していました。自動車整備工場内において、石綿含有ブレーキライニング、クラッチフェーシングの交換、研磨作業等の補助業務(清掃等)に従事して、アスベストにばく露しました。

訴状によれば、具体的には次のような作業に従事していました。

(1)ドラムブレーキの整備作業による曝露

ア 大型バスの整備作業等において、ドラムブレーキの整備作業の補助を行っていた。

イ ドラムブレーキは、車輪とともに回転するドラムの内側にブレーキを踏んだ際に作動する油圧ピストンの力で、ブレーキシューに貼ったブレー キライニングを押しつけることによって摩擦力を発生させ、タイヤを制動させるという仕組みになっている。ドラムブレーキの図は次のとおりである。 

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【図:ドラムブレーキ】曙ブレーキ工業株式会社より引用

ドラムブレーキは、ブレーキライニングをブレーキドラムに押しつけて自動車を制動することから、運転者がブレーキを踏むたび に、ブレーキライニングがブレーキドラムの内側との摩擦により削れ、粉じんとなってブレーキシューとブレーキドラムの間に蓄積する。 

ウ 本件修理工場に勤めていた自動車整備士は、ドラムブレーキの整備作業として摩耗したブレーキライニングの交換作業の補助を行っていた。このブレーキライニングの交換のためには自動車のタイヤを外し、タイヤに組み付けてあるブレーキドラムを取り外す必要があるが、自動車整備士がブレーキドラムを取り外す際,上記の石綿を含有する粉じんが飛散しており、傍で補助作業をしていた被災者も石綿を含有する粉じんにばく露した。 

また、自動車整備士がノミを用いてブレーキシューからブレーキライニ ングを取り外していた際にも、石綿を含有する粉じんが飛散していたが、被災者も自動車整備士の傍で交換作業を補助しており、石綿を含有する 粉じんにばく露した。 

(2)ブレーキライニングの研磨によるばく露 

さらに、自動車整備士はドラムブレーキに新たなブレーキライニングを取り付けるにあたり、うまく取り付けられるよう、ブレーキライニングを研磨して形を整えていたが、この作業の際にも、石綿を含有する粉じんが発生しており、傍で研磨作業の補助をしていた被災者も石綿粉じんにばく露した。 

(3)クラッチの整備作業におけるばく露 

被災者は、自動車の整備作業において、クラッチに固定されている摩擦材であるクラッチフェーシングの交換作業の補助を行った。 クラッチフェーシングは自動車において、駆動力の伝達や制御に用いられる摩耗材であることから、クラッチを使用するごとにクラッチフェーシ ングが摩耗し、粉じん(石綿を含有する)となってクラッチ内に蓄積した。そのため、本件修理工場に勤めている自動車整備士がクラッチの整備のた めにクラッチを自動車から取り外す際には、上記の石綿を含有する粉じんが飛散しており、その傍で補助作業を行っていた被災者も石綿粉じんにばく露した。

 (4)クラッチフェーシングの研磨作業によるばく露 

さらに、自動車整備士はクラッチフェーシングをクラッチに取り付ける際は、ブレーキライニングの場合と同様にクラッチフェーシングを研磨していたため、この作業の際、傍で補助をしていた被災者にも研磨した部分が粉じん(石綿を含有する)となって飛散した。 

これまでの石綿労災認定では、「自動車・鉄道車両等を製造・整備・修理・解体する作業配管・断熱・保温・ボイラー・築炉関連作業建築現場の作業(建築現場における事務職を含めた全職種)」に該当する事業所が約400件となっています。

今回、提訴された被災者と家族は腹膜中皮腫の発症当時、石綿ばく露との関連性が十分に認識できず、逝去から約10年後に石綿健康被害救済法にもとづく「労災時効救済制度」で認定された上での提訴となります。労災認定されていない中皮腫や肺がんの方もまずはご相談ください。

北海道新聞(2019年10月8日)『バス整備場で石綿被害』平取の遺族 損賠求め国提訴

https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/352794?rct=n_hokkaido

曙ブレーキ工業株式会社:ブレーキの仕組み知ってる?ドラムとディスクの違いについて

https://www.akebono-brake.com/product_technology/product/automotive/drum/

厚生労働省:石綿にばく露する業務に従事していた方へ

自動車・鉄道車両等を製造・整備・修理・解体する作業[PDF形式:408KB]

産経新聞(2018年12月18日)「アスベスト訴訟、車整備工が和解 大阪地裁」

https://www.sankei.com/west/news/181218/wst1812180043-n1.html

厚生労働省:自動車・鉄道車両等を製造・整備・修理・解体する作業

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/roudousya2/dl/12.pdf

腹膜・心膜・精巣鞘膜中皮腫におけるニボルマブ(オプジーボ)使用についての署名のお願い

胸膜中皮腫のセカンドラインの治療薬として、昨年、ニボルマブ(オプジーボ)が保険適用薬として使用されるようになりました。
一方、胸膜中皮腫以外の腹膜等の中皮腫(腹膜、心膜、精巣鞘膜)の患者は非該当とされたままです。
腹膜等の中皮腫患者は、胸膜中皮腫に準じる治療を受けています。
私達は、腹膜等の中皮腫患者にも胸膜中皮腫と同様の治療の選択肢を一日も早く認めて頂きたいと願っています。
この切実な思いを以下の要望にまとめ、政府、薬品会社、医療者の皆さんに届けたいと思います。
できるだけ多くの中皮腫患者の方々にこの要望に加わって頂きますようお願いいたします。同時に、患者家族をはじめ、多くの皆さんにご賛同の署名を頂きますようお願いいたします。
2019年6月7日
中皮腫サポートキャラバン隊
共同代表 栗田英司・右田孝雄