アスベスト(石綿)肺がん 遅延損害金の起算点は「診断日」の判決続く

いわゆる「泉南型アスベスト国賠訴訟」において、アスベスト(石綿)肺がんの遅延損害金の起算日をめぐる争いが続いています。2016年10月の泉南アスベスト国賠訴訟最高裁判決により、国は一定要件を満たした場合、訴訟上において和解し、損害賠償金を支払うことを決定しています。合わせて弁護士費用と遅延損害金(延滞料)も支払われることになっています。

問題になっているのは、治療中の方の遅延損害金の起算日はいつなのか、という点です。国側は、労働基準監督署が労災認定した日からだと主張しています。原告側は、病気を発症した時点(遅くとも確定診断日)から損害が発生していると訴えています。

全国で争われている泉南型国賠訴訟において、原告が国の誤りを指摘しているのですが、国側は主張を変更しようとしません。治療中の原告には時間がないため、国の誤りを指摘しつつも、泣く泣く和解した事例もあります。国は、時間をかけて争い、原告が諦めて和解するのを待っているかのような態度をとっています。

◇全国初の司法判断

そうした中で、今年3月に福岡地裁小倉支部で争っていた事件について、全国で初の司法の判断が示されました。判決内容は明解で、「行政上の決定(労災認定)がなくても、肺がんを発症した日から損害が発生する」との見解でした。この判決を受けて、厚生労働省と法務省に対して、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会などは「控訴するな」と申し入れを行いましたが、国側は原告の思いをよそに、福岡高裁に控訴しました。この事件に対する高裁の審理は早く、7月の第1回期日において結審し、9月27日に判決が言い渡されることになりました。

◇「これ以上苦しめないで」

9月17日の午前、小倉支部に続き全国2例目の判決が神戸地裁で、午後には3例目の判決が広島地裁で言い渡されました。両地裁の判決は、小倉支部に続き「肺がんの診断を受けた日」と判断しました。国の主張はまたしても否定されたのです。

神戸地裁の原告は、「私たちはお金が沢山欲しいと言っているのではありません。病気になって苦しい思いをした事実を認めて欲しいのです。治療を続けている私たち原告には、時間がありません。国は、判決を真摯に受け止め、控訴しないで下さい。アスベストによる病気を発症し苦しんでいる私たち被害者を、これ以上苦しめないでください」と訴えています。

広島地裁の判決で画期的だったのは、損害賠償額に「仮執行免脱宣言」が付かなかったことです。判決では、損害賠償額と遅延損害金に仮執行宣言(判決が確定する前であっても仮に強制執行をすることができる旨の宣言)が付きました。ただし国側が一定額の担保金を収めた場合は仮執行が免れます。これを「仮執行免脱宣言」と言います。広島地裁の判決では、遅延損害金の部分については、「仮施行免脱宣言」が付き、賠償金の元本については付きませんでした。裁判所が、原告らの健康状態を考慮して、争いのない賠償金の元本部分については、国は至急原告に支払うようにとのメッセージだと言えます。

広島地裁の原告は、「私たちの主張が認められて嬉しい。全国で多くの方が同様の訴訟を起こしているが、私たちは、年齢的にも健康的にも残ってる時間は少ない。お金の問題ではなく、国は判決に従ってほしい。早く解決したい。」と訴えています。

◇国はこれ以上争わないで!

現在、岡山地裁や大阪地裁、奈良地裁などで遅延損害金をめぐる争いが続いています。そして、9月27日には全国初となる福岡高裁の判決が言い渡され、地裁判決と同様に「確定診断日」を起算点との判断を示しました。9月30日には広島地裁福山支部でも「診断日」、10月2日には大阪地裁でも「診断日」の判決が言い渡されました。国は不要な争いを一日も早く終結させるべきです。


中皮腫ポータルサイトみぎくりハウス:アスベストによる肺がんについて

厚生労働省:アスベスト(石綿)訴訟の和解手続について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075130.html

毎日新聞(2019年9月17日)「アスベスト訴訟 遅延損害の起算はがん診断日から 神戸地裁判決 国の主張退ける」

https://mainichi.jp/articles/20190917/k00/00m/040/044000c

毎日新聞(2019年9月28日)「石綿損害「診断日」起算 高裁で初判断 国賠訴訟控訴審」 

https://mainichi.jp/articles/20190928/ddm/012/040/034000c

毎日新聞(2019年10月1日)「石綿訴訟で国に賠償命令 損害起算は診断日 地裁福山支部 /広島」

https://mainichi.jp/articles/20191001/ddl/k34/040/398000c

毎日新聞(2019年10月4日)「石綿被害、再び「診断日」起算 大阪地裁判決 全国6例目」

https://mainichi.jp/articles/20191004/k00/00m/040/170000c

中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会会報(2019年10月、156号)

腹膜・心膜・精巣鞘膜中皮腫におけるニボルマブ(オプジーボ)使用についての署名のお願い

胸膜中皮腫のセカンドラインの治療薬として、昨年、ニボルマブ(オプジーボ)が保険適用薬として使用されるようになりました。
一方、胸膜中皮腫以外の腹膜等の中皮腫(腹膜、心膜、精巣鞘膜)の患者は非該当とされたままです。
腹膜等の中皮腫患者は、胸膜中皮腫に準じる治療を受けています。
私達は、腹膜等の中皮腫患者にも胸膜中皮腫と同様の治療の選択肢を一日も早く認めて頂きたいと願っています。
この切実な思いを以下の要望にまとめ、政府、薬品会社、医療者の皆さんに届けたいと思います。
できるだけ多くの中皮腫患者の方々にこの要望に加わって頂きますようお願いいたします。同時に、患者家族をはじめ、多くの皆さんにご賛同の署名を頂きますようお願いいたします。
2019年6月7日
中皮腫サポートキャラバン隊
共同代表 栗田英司・右田孝雄